えんさん

にがくてあまいのえんさんのレビュー・感想・評価

にがくてあまい(2016年製作の映画)
3.0
野菜嫌いのキャリアウーマン・江田マキは、ある日イケメンの美術教師・片山渚と出会い、一方的に恋に落ちる。ちょうど同じ頃、住んでいたアパートの契約が切れるマキは、半ば一方的に渚の家にころがり込むことになった。しかし、なんと渚はゲイで、なおかつベジタリアンだった。。食と愛をテーマにした小林ユミヲの同名コミックを実写映画化。監督は「ボクが修学旅行に行けなかった理由」の草野翔吾。

観た感じはかなりユルい雰囲気が漂う映画ですが、これがなかなか味のある作品になっていました。やっぱり、食がきちんと描かれる作品はいい作品が多いですね。本作も1つのテーマが食。アラフォーになってきた身としては、衣食住という生活の三大要素をきちんとしないと、仕事も、家庭もうまくいかないということは分かってはいるのですが、これがなかなか。。だからこそ、こういうことがきちんと描かれ、整理されている作品というのは個人的にはかなりの見応えを感じます。僕も一人暮らしを初めて、かなりの間は外食・中食中心という生活スタイルだったのですが、ここ数年はきちんと自炊し、料理もそれなりに上手くなってきたかな、、と思うようになってきました。きちんと食が満たされるようになれば、心もきちんと満たされる。「医食同源(健康推進には食事も、医療と同じくらい重要の意)」とは昔の人はよくいったもので、いい素材で、美味しい料理を作るというのは健やかな生活にも重要なのです。

と、脇道にそれたところで、本作の感想ですが、ユルい物語にも、こうした料理がしっかり映えることで、ドラマも健やかな風が流れていく。まさに、医食同源ならぬ、映食同源的な作品じゃないかなと思いました(笑。出てくる料理だけでなく、料理をつくる手さばきも美しく、映画のよい見栄え要素になっていると思います。物語のほうは、マキと渚の関係がしっかりとしたバディ(相棒)映画になっていて、お互いが共に抱える家族との付き合い方というものを、支えながら乗り越えていこうとする姿はシンプルながら、すごくいいお話に仕立てていると思います。マキを演じる川口春奈も、渚を演じる林遣都も線がやや細い役者であるのですが、本作に関しては周りを囲むキャラクターも、主演2人を食ってしまうような強烈なキャラクターもいず、むしろ絶妙に引き立てるよい配置になっているのも好印象です。

少女漫画が原作らしい、優しい雰囲気になっている作品です。渚はゲイという設定なのですが、あまりゲイっぽくないのが少々残念。むしろ、ゲイであることに大きな要素がなかったように思うのは気のせいなのですかね。。