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キングコング:髑髏島の巨神のりのレビュー・感想・評価

4.1
懐かしのキングコング。
小学生ぶりにキングコングを見たが、迫力も映像もストーリーも既作品よりも進化していた。
歴史ものが好きなので、冒頭の日本軍人、島に向かう動機となった冷戦があることが嬉しい。この要素は物語を厚くすることや現実っぽさをもたらすこと、ラストの感動に繋ぐ効果があるだろう。
それと、ベトナムのダナンやタイのバンコクなど訪れたことのある地が出てきたのが地味に嬉しかった。

本作では、「自然VS科学」の構図が見て取れる。具体化すると「髑髏島の愉快な仲間達VS人間」である。そもそも、始まりは人間がキングコングのテリトリーを侵犯し、爆弾投下したことだ。それにキングコングは当然な判断、侵犯者の殺戮を行なっただけである。だが、神の失敗作である人間は何を血迷ったか、キングコングを殺害するという動機に至る。様々な科学兵器を投入し、キングコングや髑髏島の愉快な仲間達を殺害しようと試みる。メタ的に見ていると非常に愚行であるが、その場に居たら仕方ない動機なのかなと思う。
このような価値判断を行なった背景には西洋人特有の思考が働いているのではないかと考える。和辻哲郎は自然環境が我々の自然へのスタイルを決定づけていると提唱した。日本人はモンスーンや台風、地震などの自然災害に見舞われがちだから自然に対して従順だが、西洋人は自然が脅威とはなり得ないため、支配するものと考えている。だから、近代兵器を持って自然(キングコング)を殺戮できると考えたのだろう。もちろん、場によってクレイジーになったことや後には引かない軍人魂も作用もあるが。
和辻哲郎の考えでいくと、髑髏島に存在する部族についても理解しやすい。彼らは自然に対して圧倒的恐怖感を抱いているため、自然には抗わず離れた土地でキングコングを崇敬しながら生きている。このようなライフスタイルの形成には必ず自然の超脅威が存在する。それにしても、髑髏島の部族の化粧や暮らしぶりが美しく、ミャンマーのタナカを想起した。実際にどこかの部族で採用されていてもおかしくない。
とは言え、人工衛星によってフロンティアが消失したことは残念だ。未知なるものへの希望を抱きたい。。
り