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溺れるナイフのこのレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
3.1
徹夜で高校生が主役の映画3連続、2本目。まあ、この映画は最初みんな中3で、途中から高校生になるんですけど。

山戸結希監督作品ってこれが初なんですよね。この人にとって、話の展開がどうとかってどうでもええんやなぁと思いました。説明しなくていいとこは説明しなくていいじゃん、なんなら説明した方がいいところも説明しなくていいじゃん!みたいな。

コウちゃんと夏芽が何故ゆえ付き合うというか、惹かれ合うのか?は一切セリフとかでは語られない。でも、映画冒頭の神さんがいる海で泳ぐコウちゃんと夏芽が初めて出会うシーン、あれだけでもう十分でしょう。あそこまで運命的な出会いを果たしてるんだもん、惹かれ合うしかなくない?って話だと思いました。コウちゃんは本当に「神の子」って感じがしたし(泳いでるシーンは人魚みたい)、あの冒頭のシーンは2人が惹かれ合う運命にあるのだというのを十二分に表現してたと思う。

映画の中であれだけ運命的な出会いを男女がするシーンって、たいてい映画のラストに来ることが多いと思うんですよね。『君の名は。』とかこの間観た『わたしと彼の漂流日記』とか。最初の出会いが2人の関係性にとってのテンションがマックスで、そこからさらに上がることってほぼほぼないわけだから。だから、この映画は男女が最強に運命的な出会いを果たして、そっから2人がどうなるのかを描いてて、けっこう難しい作業だよねと思った。

そっからの展開っていうのは、特に2人の気持ちが分かるわ〜とかもなく、ああ、映像と音楽で魅せたい人なんだなぁという印象。夏芽が再び東京で芸能人として活動していくか、というくだりは、「消費される側の女の子の苦悩」とか「どんどんつまらない(という言い方が言い過ぎなら、まあ普通の子になっていく)自分への焦りや葛藤」とかを感じて、ちょっと面白いかなとか思ったけど、描写の1つ1つに面白さとかは感じなかったかな。映像と音楽のコラボレーションで見せきるというか、感覚的というか。だから、この人がアイドルのMV撮るの納得やわ〜とか観ながら思った。キモオタに夏芽が襲われるシーンとか、原作にもあるのかもしれないけど、映画を観る限りとりあえず映画を進めるために必要だから入れた、みたいな感じがした。


主演2人以外だと、やっぱ重岡くんが良かった。でも、重岡くんに感じる良さって、もちろん演技めっちゃ良かったと思うんですけど、なんか入社3年目の盛り上げ役に徹する若手社員に対して思う「お前、いい仕事してんな」みたいな感想だった。ていうかこの人、ほんまにジャニーズなんですか?高校生っていうか25歳ぐらいに見えるんですけど、って思った。気のええ兄ちゃん。菅田くんの全能感溢れるコウちゃんと対峙できてたと思う。
あと、上白石萌音ちゃんも良かった。分かりやすすぎる高校デビュー。あんな田舎娘だったのにそんな短いスカート履くのかお前!とか思った。最後の出演シーンはグッときた。

ラストのコウちゃんと夏芽のシーンは、ああいう虚実ないまぜになる瞬間は映画観る目的の1つだと思ってるので好きだった。全体的には、映画館で観たらもうちょいテンション上がったかもなという印象。まだまだ今の自分の中だけで完成されたビジョンに満足することなく進化してってほしいですね、監督には。
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