鰯

溺れるナイフの鰯のレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
4.0
おらこんな村いやだ~

東京でモデルとして活躍してきた夏芽は、家族の事情で祖父の営む和歌山の旅館へと越してくる。海辺に出てみると、夏芽は金色の髪をしたコウと出会い強烈に惹かれていく

恋愛映画だと思って観始めたら、作家性と演者の力が爆発していていい意味で「えぐみ」のある映画でした!びっくり
冒頭の2人が出会う海が何故か異様に黒い。その後も水辺にはわざと色を付けているかのような黒が終始目立つ。どう撮ればああなるのでしょう
音楽の使い方も変。感傷的になりそうなシーンでポップな曲がかかったり、ベタなオーケストラがあったり。しかも、ほぼフルの尺でかかるのが不思議すぎる。「俺ら東京さ行ぐだ」には少し泣いてしまいました。
全く表情が見えないほど遠くから2人を撮ったカットと2人の顔にフォーカスしたカットが連続して切り替わる不思議な編集にも、驚いた

主役のお二人は文句なく素晴らしかったですけど、三角関係に陥る大友役の重岡大毅さんには恐れ入りました。ジャニーズの方だそうですが、あんなに「普通にいい人」感を出せる人は珍しいと思います。普通にやさしくて、普通に人気者で、普通に好きになりそう。コウ(菅田将暉)との対称性は、もはや神と俗人の戦いのよう
カナ役の上白石萌音さんの目力も良かった。やさしく接しているときも目が何だか怖くて不安定な感じがする。何かしでかすのではないかという怖さ

この世代の人にしか見えていない「えぐい部分」とか「苦々しい部分」を描き切った、変な映画でした(褒め言葉)
鰯