猫脳髄

リザとキツネと恋する死者たちの猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.8
(2017.7.6 再鑑賞)
1970年代、ブダペストのアパートに住み込みで元日本大使夫人を看護する独り身のリザ(モニカ・バルサイ)。日本の三文小説(庵造みどり「桃色の空の下で」!)を信じ、30歳には真実の愛が待っていると期待する彼女には、日本の歌手トミー谷(デヴィット・サクライ)という「妄想の友だち」しかいなかった。

しかし大使夫人が亡くなり、アパートを含めた財産を引き継いでから、彼女に近づく男性が次つぎと命を落とす。リザを疑う警察はゾルタン巡査を派遣し、居候としてリザの行動を監視するが、それでも不審死は続き、次第にトミーの姿した「何者か」が仕組んだ罠であることが明らかになる。

ネオングリーンのスーツを着込んだトミーが歌う調子のいいグループサウンズ風の日本語ポップスと、ゾルタンが好むフィンランド民謡が飛び交うサウンドトラックも変わっているが、日本の玉藻前伝説を下じきにした、ヘンテコ解釈のシナリオもおかしいジャパネスク・ファンタジー。

あり得ない異時代異文化のレトロスペクティブな素材をミックスし、リアリティがまったくないが、むしろ荒唐無稽なシナリオにふさわしい作品世界に仕上がった。とにかく、妙なディスコダンスを踊りながら歌い上げるトミー(サクライは日本とデンマークのハーフだそうだ)のうさんくささが際立つ珍品。

S.SL-3
猫脳髄

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