ねこまち

葛城事件のねこまちのネタバレレビュー・内容・結末

葛城事件(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ひたすら後味が悪い映画でした。
家族経営が成り立ってない家族の物語。犯罪が起きてないだけでどこにでもある事が恐怖でした。

父は自己中心的で自分の考えを押さえつける強情な男。店員にも自分が神であるかのようにクレームをする。周りの気持ちを考えずに偉そうに振る舞い八つ当たりする。俺が一体何をした。と開き直って被害者ヅラする。息子が仕出かした過ちを叱らず、妻に怒り殴りつける弱さと向き合えない臆病者。

母は料理をしない。コンビニ弁当や出前をとる。コンビニ弁当=家庭の味がない。家コンビニ弁当が悪いわけじゃないが食事とは信頼で安らぎ。月日が経っても家族と共有する唯一ものは食事だとわたしは思う。食卓は家庭環境を表していると思う。この映画に出てくる料理は全部不味そう。

母は息子を甘やかすだけ甘やかして、息子の過ちを叱れずに私が悪いんです。と庇い悲劇のヒロインぶる。夫を愛してないといいつつ、言いなりになり、弱くてすぐに流される。見ていて本当にイライラする。自分の弱さに酔う臆病者。

兄は真面目で父に期待された事を全てこなしてきた。だけど、会社をリストラされても、妻に言えず、父と母に言えず孤立する。弟に対しても腫れものに触れるかのように接する。自分の弱さを見せれない臆病者。

弟は自尊心ばかりが強くて甘ったれだ。兄の息子に手を挙げた。私が兄なら殴るし、拒んでも謝らせる。自分が気に入らないなら直接こい。自分よりも小さい者に手を出すやつは臆病だ!と私なら言う。父と母にも何故、弟を叱らない?!あんたらの息子は小さい子を理不尽に傷つけたんだぞ。と私なら言う。だけど、みんなだんまり。たぶん似たような事何回もあったんだろう。弟の顔は絶望してるかのように見えた。きっと何度も家族に絶望したんだろう。
兄の死をきっかけに自分は絶望しても、死ぬだけの事をしない、大っきい事やるぞ!っと言わんばかりに通り魔事件を起こす。
血塗れの弟はもはや人間ではなかった。
そして、死刑囚になった弟と結婚した女がいた。彼女には死刑反対を掲げる女性で弟と家族になろうとする。私は正義感の押し売りに見えたし、薄気味悪かった。一番わたしは彼女が怖かった。この映画の一部モデルになったであろう事件の死刑囚も獄中婚をしたが、文通を通じて信頼関係を築いていたと昔、記事で見かけたのでいきなり結婚して信頼関係築くなんて無理があると思って違和感しかなかった。ラストの父に向けて言うそれでも、あなたは人間ですか!のためにいたのかな?と思う。誰もいなくなったマイホームに父は取り残され、息子の成長を願った木で自殺を図るが失敗。父の死を支える程ない木が皮肉だった。

この話に出てくる登場人物はどこにでもいる人たちで家族だ。だから、怖い。犯罪が起きなくても怖い。私は今は恵まれているだけで分からないな。と怖くなった。

ただ、好きなシーンがふたつあって、ひとつは母と息子達で死ぬ前に何が食べたいか話すシーン。普段、家族の期待に応えない弟がうな重って言うところ。こんなくだらない会話で笑い合う時間が食卓にあれば変わってたかな。って切なかった。ふたつめは父と弟の冷蔵庫の飲み物をガブ飲みするところがそっくりで笑った。あんたら親子似てるじゃんってね。
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