【そして…家は壊れる】
父『俺が一体なにをした!!』
これがこの映画のキモだと思う。
葛城家族。
それはどこにでもいるはずの家族。
しかし、母は入院、兄はリストラを悔やんで自殺、弟は8人を無差別に殺傷して死刑判決。
なにがこの家族を狂わせてしまったのか。
冒頭の父の言葉は物語の後半に現れる。
しかし、仮に前半部分にも父が同じ言葉を発していたらどうだろうか。
おそらく最初と最後で彼の言葉に対する我々の捉え方は全く違ってくるに違いない。
矢面に立って家族を守り、強い一家の主でなければならない。
それが古くから男だとされてきた。
もちろん現在でも根底にはそれが流れてるのだと思う。
だからこそ、この映画は決して他人事と割り切れない。
どの家族もがこの『葛城家』になりうる可能性があるのだ。
父は『何もしてない』。
それは事実だ。父は犯人ではないから。
自分の思う主張を常に家族におしつけ、叱り、殴ったが、弟のように社会に迷惑をかけたわけではない。
しかし、家族に対する接し方はそれで良かったか?
弟が引きこもったとき、兄が悩んだ時、やっぱり彼は父として『何もしてない』のだ。
親として子供に対して厳しく接しなければならない時はあるだろう。
けれども何事にもタイミングはある。
タイミングの悪い叱責はそれは『何もしてない』のと同義となる。
父が守りたかったのは『家』だった。
しかし、家族としての『家』は壊れ、住居としての『家』も壊れた。
どちらも自らが壊してしまったのを彼はきっとこの先もわからないのだろう。
守りたかったものを壊してしまったのは自分だったというこの皮肉が心に残る。
※ただ、死刑宣告された弟と結婚しようとする女の存在がよくわからなかった。
説明不足なのもそうだが、そもそもこのキャラクターがこの映画に意味をなしていたのか私は疑問だ。
2017.2.2