更生の場となる修道院に移されたサド侯爵が、生き方を模索している無垢な少女と接触する。サドが抱えている性観念の影響力を説いている、エロティック・ドラマ。
サド侯爵は、性の探究と人間観察を生き甲斐にしている無神論者。自分の生き方を貫くということは、反体制の立場になるということでもある。ダニエル・オートゥイユの成り切り度合いが素晴らしく、異端分子としての人間的魅力が伝わってくる。
肝心の物語内容は、サドの施設内での言動を主軸にしながら、彼が著した性観念の伝播を描いていくスタイル。「性の歓びを如何にして自分の人生に取り込んでいくべきか」という哲学を提起している、ヒューマニズム系のドラマとなっている。
サド侯爵が快楽主義へと導くメンターとなり、性の問答を繰り広げていく。「生きるための活力としてのセックス」をテーマにした至極真面目な文芸映画であり、見世物的なエロスは登場しない。下世話な方向に期待すると肩透かしを食らうので要注意。