◆あらすじ◆
1941年、ナチス・ドイツによるソ連侵攻が始まり、大学生のリュドミラは射撃の才能を評価され、狙撃兵として戦争に参加する。リュドミラは次々と標的を仕留めて敵から「死の女」と恐れられるようになる。ソ連軍上層部はリュドミラを英雄に祭り上げ、彼女は負傷を抱えても戦地から離れることが許されない立場になっていく。
◆感想◆
第二次大戦中、309人のナチス・ドイツ兵を射殺したソ連の狙撃兵リュドミラ・パヴリチェンコの生涯を描いた作品となっていて、彼女の常人離れした冷静さとその裏では上官との愛を育む普通の女性としての姿が印象的でした。また、本作は戦場での彼女の活躍と並行して、アメリカに招かれて大統領夫人のエレノア・ルーズベルトとの親交を深める姿が描かれていて、男勝りの戦闘能力と女性らしさを兼ね備えた姿が魅力的でもありました。
軍人の父によって男のように育てられたリュドミラは同年代の女性たちのように色恋沙汰に興味が薄く、狙撃能力で男に負けないという自身に満ちた人物であり、明らかに異質な存在のように感じました。そんな彼女ですが、戦争の中で上官のマカール、レオニードと恋仲になります。そこには自分に負けない戦闘能力の持ち主に惹かれていて、彼女の理想の高さを感じました。
リュドミラの怪物じみた狙撃の戦果からソ連軍の上層部は彼女を英雄として祭り上げます。その裏では幾度となく死の危険に遭遇して恐怖するリュドミラの姿があったのですが、それを上層部が許さなかったという事情があって、なんとも皮肉的でした。
一方、リュドミラはアメリカに招待された際にエレノア・ルーズベルト大統領夫人と親交を深めます。リュドミラに対してソ連が余計な情報を出さないようコントロールしようとする中、エレノアはリュドミラに彼女の本心や女らしさを大事にして垣根なく付き合っていて、2人の話す姿は親友のようで素敵でした。
どこまで真実なのか分かりませんが、本作のリュドミラは卓越した射撃能力を持ちながらも決して殺人マシーンではなく、1人の女性だったことを強く認識する作品でした。なかなか面白かった。
鑑賞日:2025年3月22日
鑑賞方法:Amazon Prime Video