柏エシディシ

ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこその柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
ニューヨーク、クイーンズ区ジャクソンハイツ。167の言語が話され、まさにアメリカの縮図ともいうべき多様な人種が住む街。
フレデリック・ワイズマンのいつものダイレクトスタイルの撮影。
ほんとうにただ街の様子を、カフェや集まりでおしゃべりしている人々を映しているだけ。しかし、それが面白い。
本当にひとつの街なの?と思うほど画面が転換するたびに装いや人種が変わっていく。
もちろん、そこには貧困やヘイトクライムの影がない訳ではないだろうが、おしなべて活気に溢れている。
巨匠の視線は静かだが、あたたかい。

コロンビア移民の人たちが街に繰り出しワールドカップを応援しているから撮影は2014年頃だろう。
今は昔、といった感じだが、その後のトランプ政権下で、この街の様子は変わってしまったのだろうか。
右傾化していく世界の潮流の中で、このタイミングでこの街の様子を捉えたワイズマンの意図とメッセージを思う。

映画のもうひとつのテーマはジェントフィリケーション。
ちょうど映画「インザハイツ」を想起させられたが、その波はマンハッタンからクイーンズまで拡がっているのだ。
この映画から5年経った今、この街の人々や風景も様変わりしているのだろうか……
柏エシディシ

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