アタフ

ハッピーエンドのアタフのレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.4
ミヒャエル・ハネケがどんな監督かを知ってるのであれば、どうしてもツッコミたくなってしまうタイトル。本当にハッピーエンドなのかを確かめるべく、角川シネマ有楽町へ颯爽と乗り込んだ。都内だとココしかやってないのよね…

劇場内には上品なご年配のお客さんが多く、流石銀座といったところ。
そんな環境の中鑑賞。

いやぁ~これはまごうことなきハネケ映画でした

ハネケの映画って誰かに感情移入させるような撮り方はせず、固定カメラで登場人物を捕らえ続けたり、会話を聞こえないような遠距離から撮り続けたりと、あくまで観客は第三者の視点で見ることを余儀なくさせられる。今作でもその撮り方は健在で画面からほとばしるハネケ感に私はもう満足。

お互いに自殺願望のある老人と孫娘の二人がある秘密を元に心を通わせる物語。イザベル・ユペールが主役ではなかった。一家の長である老人を演じるジャン=ルイ・トランティニャンは『愛、アムール』で夫を演じていた人らしいが、そうなるとこの二つの映画はストーリー的にもつながっているような気がしてならない。ハネケ的に意図したところなのだろうか…?

超裕福な家庭の話ではあるが、誰しもが何かしらの秘密や問題を抱えている。家族の関係性がどこか嘘くさい感じがしてリラックスできない。まあ円満な家庭なんか描かれるはずがないですけどね(笑)

この映画のキモとなる孫娘も心の奥底が見えない、本心がわからない感じが不気味だ。演じる子は凄くかわいいのに…。『白いリボン』といい『隠された記憶』といい『ベニーズ・ビデオ』といいハネケの映画に登場する子供は皆本心がわからないそれが怖いですね。

この映画の終わり方が本当にハッピーエンドだったかはさておき、様々な解釈ができそうな映画だった。今までのハネケ映画と比べると不快感は控えめだったため、厭な気分で映画館を後にすることはなかったけど、帰宅中この映画についてずっと考えてしまうような後味のある作品。
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