wakjg

ハッピーエンドのwakjgのネタバレレビュー・内容・結末

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

母の鬱病に疲弊した少女は、殺人という行為を軽やかに悪びれもなく、やってのける。生と死の境界が曖昧な子供のもつ残虐さはハネケお馴染みか。しかし、明確な殺意はあり、母親の習慣を明確に覚え、ペットのハムスターで毒殺を試すなど用意は周到である。
スマートフォンでの撮影、投稿の様子が挿入される。誰もが動画を自由に撮り共有できる時代となり、ハネケならではの皮肉も込められているのかもしれない。テレビで飛ぶ大きな鳥が小さな鳥を切り刻んで行く様子を見たとき、私達はそれを自然の摂理(だったか)と呼び受け止められるが、実際にその様子を目の当たりにした時にはひどく恐怖を感じるという話にあるように、少女が死を通してみるのは、自らセッティングした母の死もラストシーンを飾るおじいさんの死に行く姿もスマートフォンというフィルターを通してである。実際に自分の兄が肺炎で亡くなった時にはひどく怖かったと話している。
ラストシーンは自分には考えられない行為だったので意外性に唸り、薄ら怖いと同時に、コミカルでもあった。監督の手腕が冴える。

なぜ、少女は父親を求めたのか。施設に入れられたくない、家族でありたいということもあるかもしれない。
少女から感じるのは、女は産まれながらにして女である、ということ。
父という男性は特別なのだ。母親までも自身のライバルでありえるのか。父の前での涙は演技にすら見える。

また、家族の一員であるイザベル・ユペールの息子の呆れる程の不甲斐なさも特筆ものだ。
カラオケ店では息切れ自制できない程踊り狂い、母親の婚約パーティーでは全く所縁のない道端の黒人を連れてきて騒動を起こし、いずれも周囲の人々から引かれ孤立して行く。

少女の父親は離婚後、再婚し若い妻と子供を設けたが、バイオリニストと不貞関係にある。彼らは、情熱的な夜を重ねて暫く直接的には会っていないが、SNSを通しては頻繁にメッセージのやり取りし、言葉での逢瀬を重ねている。
この様子も、また媒体を介した間接的なコミュニケーションであり、直接的に出会わないからこそ燃えるのか。その根拠に、建前なのかも知れないが父親は娘に二人の関係を問われ時に、妻と別れることはないと断言している。目の前のリアルではない虚構だからこそ惹かれるのだろうか。

不謹慎でブラックな独自性は幾つになっても健在だ。
wakjg

wakjg