小

ハッピーエンドの小のレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.0
「悟り」を実感したことがないのでイマイチ消化しきれていないけれど、「悟り」とは、現実に起こっていることは、例えて言えば映画の中の出来事であり、自分とは映画の観客なのだから、映画を観ている自分(認識する自分)とは無関係なのだということを理解することだとすれば、本作は映画で起こっていることが気に入らないことであればスクリーンを破ったり、映写機を壊してしまえばいい、という映画を観ている自分(認識する自分)の暴走を描いているような気がする。13歳の少女エバと85歳の祖父のジョルジュの2人を観ていてそう思った。

映画を見ている自分(認識する自分)の暴走とは完璧を求めるもう一人の自分のこと、すなわち全能感と言い換えても良いかもしれない。そして本作の冒頭から出てくるスマホはその全能感を表現するのにピッタリなアイテムのような気がする。

スマホの中の世界はすべて自分のコントロール下にある。スマホで好きなように写真、動画を撮影・編集してSNSをはじめとするネットで表現する。世界をはじめるのもやめるのも自由自在。その気になればどんな内容でもネットに配信することができる。スマホの中世界は、自分があたかも神のように作った世界のようだ。

映画ではエバが現実の世界で自分の全能感を満足させるためにある行動に出て、それをスマホに録画する。スマホを通じて現実世界を見ることで、その行為がもう一人の自分、つまり全能感が行っていることを象徴しているのではないかと。

全能感は全能を求めるがゆえに、その欲望を満たすための行為は不完全な自分をも含めたすべてのものに対して向かっていく。

エバとジョルジュほどではないにせよ、他の人物も多かれ少なかれ、同じような方向、つまり世界を自分の思い通りにしたいという欲望の実現に向かっている気がする。

それは現代の問題そのもののような気がするけれど、その行きつく先がどうなるのかといえば…。『ハッピーエンド』は皮肉なタイトルだけど、全能感の立場からすれば、この映画のエンドが必然でハッピーなのかもしれない。

●物語(50%×4.5):2.25
・自分勝手な解釈によれば、面白かった。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・エバの何を考えているのかわからない感が良く出ているのではないかと。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・不穏な雰囲気が出ていたかと。
小