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ハッピーエンドのkrhのレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
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確かにエヴとジョルジュ爺が望むのは「死」なわけで、それならば彼らはひたすらにハッピーエンドを目指しているんだなと思った。誰しもが例外なく迎える結末を、望んでさえしまえばそれはハッピーエンド。

母親に薬を使ったり、妻の首を締めたり、決定的なことをしてまでも場面を動かし続けようとする2人。場面を動かし、転がり続ける先には「死」が待っている。それとは対照的に、自分のエゴが他人を無遠慮に傷つけるとすら思わず、現状を維持し続けようとする娘アンヌと息子トマ。ずるいことをしてまで、さらにそのずるさを露呈されてうろたえる程度の覚悟で、現状維持=生にしがみつくなんて、なんて愚かだろう。そんな彼らにハッピーエンドは手に入らない。

長く間をとった、何気ない仕草の繰り返しや何が起ころうとしているのかわからない光景を見させられるシーンが続く。それをなんとなく眺めるうち、その中でなにか重大なことが起こってしまう。重大なことが起こっているのに、確かに見ているのに、見逃してしまう。そういう不穏さを見続けているような感覚だった。気まずいといったらありゃしない。ハネケなので、不穏なのは当たり前なのでしょうけど…

動画で動作のコンマ数秒前に出てくるテキストや、チャットで少しずつ打ち込まれる文字。原語がわかれば、そのタイミングやスピードで浮かび上がる言葉の意図やニュアンスがもう少し受け取れたんだろうと思って、ちょっともったいなく思った。

ピエールの、シャンデリアカラオケダンスシーンがオチも含めて好きです。
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