emily

ハッピーエンドのemilyのレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.0

豪邸に三世代で暮らすローラン一家。父は建設会社を経営するしており、すでに引退し、娘のアンヌとその息子が後を継いでる。ある日アンヌの弟トマの前妻との子で13歳のエヴァが一緒に暮らすことになり、それぞれの秘密を抱える中、85歳のジョルジュがエヴァに秘密を打ち明ける。。


スマホで映された動画から始まる。衝撃的な生き物の死から始まり、冷めたローラン一家の様子を、ロングショット、閉鎖的なカメラ、人物の後ろ姿からの描写など、時には大事な会話を聞き取ることができず、物語の構築を観客に強いる。

挿入されるニュースの映像は荒い画質でまるで誰もが興味を持っておらず、それぞれの"生活"という狭い世界の中で生きてる。それぞれの秘密を小出しして見せて生き、人のことには無関心な現代社会を切り取る。


常に死の匂いが漂いながら、しかしそれまでも他人事で、自分の身に起こるとは思っておらず、最後の瞬間まで動画を撮ってるエヴァ。しかしその姿は画面を通して見ると残酷であるが、実際"他人の死"はsnsで公開されて一つのネタとされてしまう世の中。生きることだけがハッピーエンドとは限らない。当然死の瞬間だって選べる権利があるはずだ。

観客にとってはただの画面の中のこと、しかしそれは現実に起こることもあるのだ。他人事で、閉鎖的な現在社会の私たちの心を大きな皮肉とともにグサリと突き刺し、たしかに"考えさせる"時間を与える。観客はただの観客ではなく、しっかりと参加させられるのだ。それこそが本作の意味であり、目指すとこのように思える。
emily

emily