この映画のタイトルは「ハッピーエンド」。しかし監督名を見ると、そのままハッピーエンドな映画で終わるとは到底思えません。
監督はミヒャエル・ハネケ。癖の強い映画撮らせると天下一品な監督。彼の作品は今まで「ファニーゲーム」と「隠された記憶」しか見たことはありませんが、それだけでもこの監督がただ者ではないのが分かります。
固定カメラでの長回し、余計な音楽は一切入れず、その場の空気感をリアルに伝える彼独自の作風は、本作でも存分に発揮。
一見裕福に見える一家の各人が抱える闇。それを1時間45分の時間で、静かながらもじっくり確実に炙り出す作品。どう転ぶか読みづらい展開にハネケ映画の醍醐味を感じました。
現代ならではと言えるSNSの問題や、家族同士の関係。そして移民問題にも一石を投じています。無駄がなくあっという間に過ぎ去る上映時間。
決して手放しで好きと言いづらい作品ではありますが、見応えは存分にある作品です。
何より驚いたのは、物語のキーを握る13歳の娘エヴを演じたファンティーヌ・アルドゥアンの演技力!
劇中ほとんど笑顔を見せず、常に心に闇を抱えている少女を、見事に演じていましたね。本当に13歳とは思えない!今後の更なる飛躍が楽しみです。