夏来

ひつじ村の兄弟の夏来のレビュー・感想・評価

ひつじ村の兄弟(2015年製作の映画)
2.6
あけましたおめでとうございます。こちら年明け一発目映画館です。
おやおや、忘れられない年になりそうだぜ…?

明転した瞬間に盛大に吹いてすいませんでした。前に座っていた品の良い初老の男性が、立ち上がってこちらを振り向いて見事なアルカイック・スマイルを見せてくださいました。ご利益があると思う、良い年明けです。

牧羊を生業とする老兄弟の軋轢と親愛の再生を、丁寧な映像美と魅力的なキャストで描く、北欧の魅力の詰まった人間ドラマ。
この一文ですませたい。すませたいのは山々だ。しかし、しかしです。わたしはこの衝撃をできれば伝えたい、あなたに。
いやー、もうね、なんだろう、あとワンカット足せたよ、それで多分TSUTAYAの「良品発掘」コーナー行き待った無しだった、だけどあえてそれをしない。それをしないんだね君は!素敵だ!潔い!しかし目的地が迷子!
こういう映画ってねー観てる途中から匂うじゃないですか、きな臭いっていうかね、おやおや?って思うじゃないですか、ところがどっこいだよ、煙臭さを感じなかったよ。愛すべき「クセ」くらいのもんだと思ってたよ。
この映画すげー良いんですよ、だって。北欧の町外れ、雪化粧の山並みを背景に建つ老兄弟の家を舐めるロング・ショットは芸術的なまでに美しいし、ひつじの無垢な瞳とそれを見つめる年輪を重ねた瞼の対比はそれだけで迫るものがあるし、北欧らしくインテリアや小道具もぐうの音も出ないほど可愛いし、演技は誰のどれをとっても違和感なく完璧だし、説明しすぎない描写はどれも秀逸だし、思い返してみても、あの一瞬までは泣く気満々だったよ?ハンカチ握りしめてたし、綺麗に見える涙の角度までは計算してないにしてもさ、良い話だったねってコーヒー片手に談笑するとこまで算段ついてました。おいこらですよ。

いやー、すごい。忘れられないです。ある意味では得難い鑑賞体験でした。誰かが言っていた、不味いものを前にしたほうが、表現は雄弁になるって。
今年もお世話になります。