おはる

ビースト・オブ・ノー・ネーションのおはるのレビュー・感想・評価

3.8
「I'm a good follower,sir」
内戦下のアフリカの某国。無邪気だった少年アグーが冷酷な殺人マシーンへと変貌していくお話。

Netflixオリジナルの戦争ドラマ。本作で描かれるのは戦争の過酷な現実だ。それまで平和だった街が政変により政府軍と反政府軍が争う戦場と化し、家族は引き裂かれ、そして捕らえられた少年は反政府軍により少年兵へと仕立て上げられてしまう。とりわけ彼が本物の兵士となる''儀式"のシーンは目を背けたくなるほどにあらゆる意味で痛々しくまた恐ろしい。

そんな彼に一目を置くのが指揮官と呼ばれる人物。表の顔は部下を鼓舞し戦闘を勝利に導くカリスマ。しかし裏では昇進のことしか頭になく司令官に媚を売り、また夜な夜な少年にいかがわしいことを強要するペドフィリア。さらに司令官に左遷を告げられるや反旗を翻し、最後には部下にも見捨てられるという哀れな存在だ。
そんなゲス野郎を演じるのが先日観た『パシフィック・リム』で善き司令官を演じたイドリス・エルバというのだから役者さんって本当にすごいなあと感心させられてしまった。

あくまで本作はフィクションということだが、きっと今も内戦状態にあるどこかの国では紛れも無い現実の物語なのだろう。知らないことは罪深いなと思うとともに、知ったところで我々に何かできることはあるのだろうかと絶望的な気持ちにさせられた。
おはる

おはる