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風の波紋のundoのレビュー・感想・評価

風の波紋(2015年製作の映画)
4.0
慎ましき営みの小宇宙、北陸編。

東風セレクション。
北陸の妻有地方(新潟県、長野県)が作品の舞台。
豊かな四季の風を浴びながら、自然の一部として暮らす人びとの営みを丹念に撮り上げたドキュメンタリー。

本作の中心人物、木暮さん夫妻は自然との共生に憧れて10年前に移住してきた。
物語は、木暮さんが自分の家を修繕している場面から始まる。
東日本大震災の陰に隠れているが、2011年3月12日、新潟の県境で発生した地震で茅葺屋根の家が損傷してしまったのだ…。

なんとも素敵な味のある作品。
この地域に住む様々な人々が登場し、協力しながら、植物、動物と共生する模様を描く。

山の幸が美味しそう。
山羊、猫、鶏、カエルなどの動物がかわいい。
新緑が美しい。
積もる雪の量がすごい。
祭り太鼓の賑やかさ。
そして温かい仲間たちとの楽しい宴。

この雰囲気、どこかで見たような。と考えを巡らせると、イタリア映画「木靴の樹」に思い至った。
あれも小作人たちの貧しいながらも楽しい、自然との共生、営みを描きつつ、世の移ろいを描いた作品だった(と、思っている)。
本作もその雰囲気に近いものがあると感じる。

移住もののドキュメンタリーはテレビなどでもよくある題材なのだが、美しい映像と詩情溢れるシーンの数々がそれらと一線を画したものだと感じさせてくれる。ラスト付近にはちょっとしたサプライズも。

この集落に、さわやかな風がいつまでも吹き下ろされ続けることを願いたい。
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