いや、凄い作品を観てしまったものだ！ 私の苦手な SF 映画とあって敬遠していたのだけれど、いざ観てみると『トゥルーマン・ショー』の脚本家らしい（不勉強にしてアンドリュー・ニコルが関わった映画はこの一本しか観ていないので……）ありきたりな発想になりそうなところを細かいところまで丁寧に描き上げている。しかもそれを、異論は認めるがデヴィッド・フィンチャーを髣髴とさせるクールな質感を伴った映像で撮っているのだ。私は「スジ」の話しか出来ないのだが、この映画では上述した SF とロマンス、そしてサスペンスの他にミステリの要素まで仕掛けられている。巧みにミスリードを誘う展開、何気ないシーンが保つ意味……そのストーリーテラーぶりに舌を巻いてしまった。こんな作品を敬遠していたことを心から恥じる。
