継

ガタカの継のレビュー・感想・評価

ガタカ(1997年製作の映画)
5.0
印象的な台詞が満載な作品ですが、その一方で
台詞ではなく画で伝える演出もさりげなく冴えていて好きです。
例えば
遺伝子の優劣が必ずしも絶対ではない事を示唆する水泳勝負。
DNAの二重螺旋構造を模した螺旋階段をその運命に抗う様に這い上がっていく、作品テーマを端的に現すシーン。
存分に残した『本人である証明』とは別に、自分が生きた証=『形見』として遺して渡し、それを時間差で明らかにして観る者に(そういうことか)と伝えるシーン。
屈辱だったメダルが炎に照らされてその『色』を変える、切なくも優しいシーン等々… 。

もうひとつ、主演二人が踊るシーンのBGMの選曲について。サントラを手掛けるマイケル・ナイマンの楽曲ではなく、わざわざスタン・ゲッツというジャズマンの “first song” という演奏を使っているのに驚かされます。
若くして天才と持て囃されながらも麻薬によるトラブルで逮捕、服役。後年に復活を果たすも、末期の癌が判明。この演奏は、ついにトップに君臨する事は叶わなかったものの、宣告された余命を遥かに超え、運命を覆すように演奏活動を続けてみせたゲッツが遺した最期のライブ演奏=形見の様な白鳥の歌でした。
ダンスには不似合いな物悲しい旋律なのに、そしてパット・メセニーや他に幾つも有名で優れた演奏があるのに、敢えてこのテイクをセレクトした理由ー、作品のテーマをゲッツの人生になぞらえたように思えてなりません。アルバムのタイトルは、これさえも示唆的な『people time』。選曲者の慧眼に敬意を表します。