しめじろー

ガタカのしめじろーのネタバレレビュー・内容・結末

ガタカ(1997年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

めちゃめちゃいい話。めちゃめちゃ熱い。こんなにストレートな人間讃歌だとは予想してなかったです。だからラストの展開にもう驚いたのなんのって…。なんで!?なんで…!?映画館の照明が付いたとき、それまでの思考が全て「なんで??」に上書きされたのでした。
ディストピアが舞台のサスペンス。ミクロの世界で爪、皮膚、体毛の破片が舞う、これだけでアイデンティティとなり得る唯一無二のオープニングに早速心掴まれました。かっこいい構図も、洗練された美術も、1997年の作品とは思えないハイセンスさ。『マイノリティ・リポート』みたいなSFサスペンスなんだな〜、と思っていると、お洒落な語り口からはとても予想できないド根性熱血人間ドラマが展開されて脳天ぶん殴られます。
兄弟対決、良かったですね。兄の気持ちももちろん弟の気持ちもわかるんですよね…。沽券にかかわる、プライドが許さない、自分が崩壊する感覚…。絶対に負けられないでしょ。でもそうやって意地と意地がぶつかり合って、負けられない同士が張り合う姿は、「神の子」も「普通の子」も変わらない、紛れもなく命の原点、人間そのものの姿でありました。熱い…。
だからやっぱり、最後の「なんで!?」が拭えない。心臓の弱いアイリーンも、検査医師の息子も、ヴィンセントの途方もない反逆に心動かされたんじゃないの?恵まれた体力で階段を登ったジェロームは生への希望を感じなかったの?理屈はわかります。わかりますが、あのヴィンセントを見ていたら、死という選択肢はあまりに遠すぎて…。私だったら、泥水すすってでも生きようと思ってしまうな…。