JunIwaoka

スナップのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

スナップ(2015年製作の映画)
3.5
2015.10.27 @ 28th TIFF

初めて観るタイ映画は、面白い映像演出でInstagramを多用する現代的な若者のラブコメディで、意外ないくらいにポップな甘酸っぱい青春映画だった。タイの瑛太か!と思うような爽やかなイケメンの忘れられないヒロイン役が愛嬌がなくあまり魅力的に感じれなくて、長く続くもどかしいシーンに少し退屈さを感じた。鑑賞後のQ&Aで登場した監督が思っていたよりずっと歳をとっていて、若い監督がスタイリッシュに描くロマンスかと思って観ていただけに、白髪のおじ様が「ロマンチックな気持ちは実在するものでしょうか」と言っていて唖然。エンドロールに見たFor those who were thereのような表記が印象に残ってたのもあって180度解釈が覆った。
写真という過去のある瞬間を切り取った事実に想起する気持ちは本物なのか、ただ美化しただけの偽物なのか。カメラマンの彼は学生時代から撮影してたから当時の写真に写っていない。よって回想によるシーンがなく、場所や物による思い出のすれ違いを二人のぎこちない会話で描く。階級社会の背景(だから彼女がヒロインなのか!)やタイミングの悪さもあって当時のままもどかしい関係性はなかなか変わることがないが、写真を意識して固定カメラで撮られた映画が唯一のロマンチックなシーンで変化をもたらせていたことに気がつく。
冒頭のInstagramで示されるように、写真にフィルターをかけて美化し、容易に共有することはできるけれど、そのときの気持ちは残るのか?本物だったのか偽物だったのかはそこに答えはなくても、いまは会うことはないそのときにそこにいた人、その事実に想いを馳せる。
JunIwaoka

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