えふい

ゴジラvsコングのえふいのレビュー・感想・評価

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
2.0
誰ひとり人類存亡について真剣に考えてるとは思えないほど、迂闊で後先考えない行動のオンパレード。
そのおかげで怪獣側に肩入れしたくなってしまうのは、ひょっとしたら製作側の思うツボなのだろうか……。
『キング・オブ・モンスターズ』が怪獣崇拝映画であり、人間ドラマと呼ぶには個人的思想が前面に押し出されすぎていたことをさておいても、その主張が一貫していたことは確かだ。
本作はその点”虚無”である。
物語を進めるためだけに皆してバカを演じ、無駄な犠牲が増えるばかり。
巨大企業の陰謀を暴くドタバタトリオだけならまだしも、ゴジラに対抗する数少ない手がかりを探しに行く団体までもが、想定外の事態への備えもなく行き当たりばったりで作戦を遂行しては内輪揉めを演じ、「もうそういうのいいよ……」とゲンナリさせられる。
判を押したようなビジュアルの「悪役」と思しき人物も、人類を生き延びさせようとしているだけマトモに見えてしまうから始末におけない。
なるほど確かに、映像美そのものは観るべきところもある。
だがストーリーテリングの雑さが脳裏にこびりついてしまっては、もはや怪獣大決戦ですらカタルシスをもたらしてはくれなかった。
「これはゴジラとキングコングの対決を楽しむものだからそれでいい」だって?冗談じゃない。
世の中には真剣にエンターテインメントと向き合って作品をつくっている人たちだっているのだ、「エンタメ」だの「プロレス」だのを脚本の粗の免罪符にしていいわけがない。
世界有数の大企業がどれだけセキュリティガバガバなのかとか、誤作動時のフェイルセーフぐらい設計しとけだとか、「アルコール」に至る要因もなにも描かれてなさすぎだとか、大資本が「モンスターバース」を大々的に打ち上げてこのありさまか……とため息をこぼさずにはいられない。
ゴジラにもVSシリーズという娯楽に振り切った作品があるのは確かだが、それを十年以上も経た現在でそのまま踏襲することにどれほどの意味があるのか。
ファンゆえの評価の甘さにあぐらをかくのも限度があろう。
えふい

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