ヒラツカ

ゴジラvsコングのヒラツカのレビュー・感想・評価

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
3.8
米国版ゴジラの最新作は、ワーナーのモンスターバースに合流することになったキング・コングとの直接対決だ。なんにしてもまず思った感想は、コングが・・、でかい!なんせゴジラとほぼ同じ体長である。あれ?近年のゴジラって、日本版もハリウッド版も、100mを超えてるんじゃなかったっけ。一方のキング・コングは、当初のストップモーション版は置いとくとして、70年代版のジェシカ・ラングも、ピーター・ジャクソン版のナオミ・ワッツも、掴まれるとバービー人形を握った感じのサイズ感だったから、うーんそうだな、せいぜい20mくらいの大きさだったんじゃないかな。しかしまあ、一気に規格外の大きさになった。ただ、それだけ巨大化したにもかかわらず、こいつ、かなりフットワークが軽い。そして、ゴジラはゴジラで、そんなコングに負けず劣らず、俊敏に重たいパンチを繰り出したりする。
本多猪四郎のオリジナル版では、避けられない「厄災」の象徴であったゴジラ、庵野秀明の『シン・ゴジラ』でもその概念が再認識された。そしてそれはディザスタームービーとして翻訳しやすいため、エメリッヒ版ゴジラにも引き継いだし、スピルバーグは『ジュラシックパーク』に昇華することができたのであろう。それらの文脈においては、ゴジラ自体は意思を持ってファイティングポーズを取る必要はなく、定期的に海から上陸してくる重量感のある恐怖、なのだ。しかしその一方で、「怪獣映画」というエンタメに取り込まれたゴジラは、いろんな敵と戦う、アンチヒーローの義務を与えられていった。ティム・バートンやギレルモ・デル・トロが好きな「KAIJU」はこっちなわけで、そのある意味稚拙な設定には、国内外の映画マニアたちを掴んで離さない、奇妙な魅力があった。
その点、「モンスターバース」のシリーズに登場するゴジラって、前者と後者、どちらの要素も有してる気がしていて、ある意味、ゴジラのこれまでの歴史を、総括できてるんじゃないだろうかな、と考えている。本作は、一見すると後者の役割がかなり強めなに思えるんだけれど、よくよく考えて欲しい。コングは、日々のストレスや故郷へのノスタルジーや、かわいい子供との絆など、いろんな対外的な要因に、悩んだり励まされたりしながら、いろんなことを考えて、プライドを持って、必死で戦う。一方のゴジラだ。突然現れたと思ったら、エイペックスの研究所を荒らし、コングの輸送船を荒らし、そしてふらっと帰っていくだけだ。え?なんなの?この、ゴジラの、天然というかサイコパスというか、行動に対する根拠みたいなものを超越したところが素晴らしい。
前回から引き続き、娘のミリー・ボビー・ブラウンが大活躍するが、うーん、こう言っちゃなんだけど、成長するに従って、子役のころに持っていた特別な輝きが薄れてしまうタイプな気がするなあ。アレクサンダー・スカルスガルドもレベッカ・ホールも、特に印象の残らない凡庸な演技を魅せるが、でも主役はゴジラとコングであるわけで、人間が爪痕を残そうと頑張っちゃうとノイズになるから、実は意図したものなのかもしれない。