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ゴジラvsコングのmaverickのレビュー・感想・評価

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
4.3
2021年公開のアメリカ映画。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続く、「モンスター・ヴァース」の4作目。


賛否両論。想像していたのとだいぶ違う内容でちょっと面食らった。前作同様に、日本の『ゴジラ』シリーズへのオマージュは感じるのでそこは嬉しい。ゴジラとコングの大迫力バトルもテンションが上がる。それは良かったのだが、ストーリーがあまりにも酷いなと。コングの故郷の設定も、あまりにも独創的すぎて違和感だった。これまでの「モンスター・ヴァース」はもちろん、過去のゴジラシリーズの中でも異質だと感じてそこがイマイチだった。

過去作へのオマージュという点でも評価は二分する。本作の主たるゴジラとコングの描き方は良かった。どちらも迫力があり、行動心理などにしても納得のゆく丁寧な描写がされていた。二体が主役として中心に立つ作り。まさに『ゴジラvsコング』のタイトルに恥じないものである。この二体の表現方法は見事だなと感じた。だがそれ以外が良くない。その最たるものがメカゴジラの描き方。あのデザインはちょっとなぁ・・。確かにリアルに寄せたらああなるのかもしれないが、ロマンがないよ。『パシフィック・リム』を見習ってほしい。小栗旬が演じた芹沢蓮の扱いも酷い。あの役はただの科学者でなく、前作で渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士の息子という設定。それなのにあの扱いは理解に苦しむ。前作から引き続き続投しているキャラも、その描き方に意味があるようにはあまり感じなかった。

前作のマイケル・ドハティ監督の『ゴジラ』愛は素晴らしかった。誰よりも造詣が深く、注いだ愛の深さに感嘆するほどであった。本作のアダム・ウィンガード監督も同じようにオタクで、並々ならぬ熱量で臨んだようだ。だがその描き方の違いは如実に表れている。マイケル・ドハティ監督の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に比べると、本作のオマージュには不満が残る。小ネタはたくさん仕込んであるようだが、それが『ゴジラ』とは関係ない他の映画ネタなのがちょっとズレているとも感じる。『ダイ・ハード』やら『リーサル・ウェポン2』など、そういう仕込みをするならもっと『ゴジラ』愛を追及して描いてほしかった。

キャストは前作同様に魅力的な面々を揃えてある。アレクサンダー・スカルスガルドにレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリーにエイザ・ゴンザレス。小栗旬も存在感あった。だがその魅力的なキャストを上手く使えたかというと微妙だ。キャラの立たせ方が弱いなという印象を受けた。だがその中で抜群の活躍を見せたキャラがいる。コングと意思疎通が出来るジアという少女がそう。このジアがいるからこそ本作のコングは引き立っており、実に感情豊かで愛嬌がある。ジアを演じるのは本作で映画デビューを果たしたカイリー・ホットル。これがデビュー作とは思えない堂々とした存在感で素晴らしい。前作のミリー・ボビー・ブラウンがそうであったように、本作での彼女は誰よりも一際目を引く存在であった。

ストーリー的には不満の方が多かったが、ゴジラとコングの迫力あるバトルシーンには満足だったのでそれで差し引きな感じ。海上でのバトルは『ヱヴァンゲリヲン』を彷彿させる。後半の香港での市街地戦も最高だった。コングのダイナミックな動きはハリウッド映画ならではでテンションが爆上がり。スケールの大きい二大怪獣バトルは期待通りのものを見せてくれた。それだけにメカゴジラの扱いは残念だったな。


日本のファンは不満を感じる人の方が多いのではないかな。海外では概ね好評のようだが。興行成績も好調だったし、これは続編化に問題はないだろう。せっかくだからこのまま「モンスター・ヴァース」は続いてほしい。本家『ゴジラ』も評価が散々な作品はいくつもあり、それらに比べたら全然ましだから大丈夫。評価なんて気にせずどんどん量産するんだ。マニアックな作品もどんどんリメイクしてくれ。待ってるぞ。
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