ガタカの作品情報・感想・評価

ガタカ1997年製作の映画)

GATTACA

製作国:

上映時間:106分

ジャンル:

4.0

「ガタカ」に投稿された感想・評価

AKIRA

AKIRAの感想・評価

5.0
近未来、遺伝子操作により優秀な人材を意図的に輩出できる世界で、遺伝操作を行わずして生まれたヴィンセントは周りと比べ貧弱だった。やがて宇宙へと旅立つことを夢見た彼は宇宙飛行士になるために猛烈な努力をし、同レベルの能力を身につける。しかし優秀な遺伝子でないと宇宙飛行士にはなれず、遺伝子検査をくぐり抜けなくてはいけなくなった。
そこで裏ルートを用い乗り越えようとする。
----

本来、能力というのは遺伝の影響が大きいらしいが、そんな事を言い訳にもせず、ひたすらに努力して能力を身につけ夢を叶えようとする姿には胸をうたれた。
特に遺伝子操作によって産まれたヴィンセントの弟との会話で発言する彼の思いは印象的だ。
そして、彼の行動や振る舞いをみて、周りの人の彼を見る姿も大きく変わっていくシーンは最高だった。
ネタバレになるので詳細は省くが、最後のシーン観ている僕は少し悲しい気持ちになった。
脚本の素晴しさったらない、名作。これだけ起承転結がしっかりありながら106分の尺で短くも感じない作りだから凄い。人の能力を遺伝子で決めてしまう世界に努力の可能性を諦めなかった人間の話。人の繋がりからエンディングまで震えました。
サンデル教授が生命倫理の本の中で例として紹介していたので鑑賞。ドキドキハラハラの展開で普通の映画として見てもとても面白かった。しかし、やはり遺伝子技術が高度に発達した世界を抱くこの作品には道徳的な不安が漂う。技術に対して保守的な態度の私はこんな未来怖いなぁと思うのだがしかし、「人が想像できることは、必ず人が実現できる」(ジュール・ヴェルヌ)のである。こんな世界はもうすぐそこなのかもしれない
kassi

kassiの感想・評価

4.0
適正者と不適正者。

2人の友情に感動。

淡々とでも最後まで力強く進むヴィンセントの姿がとても印象的。
じんわり響く!
努力の必要性もそうだが、頑張ってる人を応援する人は必ずいるから諦めず頑張れと勇気を与えられる映画!
高い壁にぶつかった時に観る映画!
努力を続けることの大切さがわかる映画!

同じ境遇に置かれたら、多くの人が色んなことを諦めちゃうと思う。でも手段を選ばずに努力を続ける主人公に自分も奮起される。
「ニコル」見たので、ガタカも再鑑賞。2019年の今、もはやSFでもない話となった。
SFでありヒューマンでありちょっとサスペンスでもある。
努力次第で世の中に不可能なことなんてないと教えてくれました
yoshi

yoshiの感想・評価

4.3
希望を持つこと、努力することの素晴らしさが、美しくも悲しく描かれている映画。SFの殻を纏った人間賛歌である。目的を持った人間の弛まぬ努力が、生まれ持った能力を凌駕することに純粋に感動を覚える。また、主人公を支える周囲の人々の些細な言葉、仕草から読み取るべきことが多く、様々な考察を楽しめる映画でもある。

一風変わった切り口の風刺と、虚無感の残る物語を得意とするアンドリュー・ニコル監督の現時点での最高傑作。

極限まで削ぎ落としたシンプルなモダニズム美術での未来世界の表現と、読み取りを必要とする俳優陣の繊細な演技。
そして登場人物の心情を増幅するマイケル・ナイマンの音楽。
淡々して静かだが、心に訴えてくる作品だ。

この物語を一言で言えば、才能の限界を努力で越える若者の話。

主人公は、現在の世界にとってはごく普通の生まれだが、この映画で描かれる少しだけ先の未来の世界においては、あまり歓迎されない。

この世界では遺伝子操作で、親が望む子供を「作る」のは当たり前。
学歴や運動能力、人種、健康状態すら遺伝子操作でマイナス要素を回避できる。
強烈な差別社会への風刺である。

当然、主人公は不適正者として生きていかざるを得ない。
遺伝子操作で生まれた弟に、差を見せつけられて育つが、それでも宇宙飛行士になるという夢だけは諦め切れなかった。
それが主人公の生きがいとなっていく。

ある日、弟と遠泳勝負をする主人公。
心臓に障害があるため、いつもは負けていたのに、その日は弟に勝ってしまった。
この時、主人公は自分の夢に向かって、どんな方法を使ってでも突き進むことを決心する。
諦めることは、自らの可能性を手放してしまうことだと自覚するのである。

主人公ヴィンセントは適合者に成りすまし、夢である宇宙飛行士になることを決意する。

経歴詐称の協力者ジェロームは、事故が元で下半身不随になった元水泳選手。
プライドが許さないのか事故を隠している。自分の身代わりヴィンセントに生活費を稼いで貰おうと詐称に協力する。

主人公が潜入する「ガタカ」という宇宙関連の企業(?)は、入館にも血液チェックが必要で、何かあれば尿検査と色々とセキュリティが厳しい。

主人公が自分に成りすますために、ジェロームは血液、尿、髪の毛、あらゆる体組織を提供する。
そのため、主人公は異物である自身の体組織を残すまいと潔癖症を装い、細心の注意を払う。

「清潔は信仰に似たり」名言だ。

朝となく晩となく身体を擦り、洗い、垢やフケが落ちないよう心がける。
キーボードの隙間すら掃除する念の入れよう。
プールで一人泳ぎ、体力向上に努める。
涙ぐましい努力である。
しかも業績はトップクラス。
ついに土星衛星タイタン行きの推薦を受ける。

しかしある日、ガタカ内で、主人公を怪しんでいた主人公の上司が殺されるという事件が発生。

野次馬で見物した時に主人公の睫毛が殺人現場付近で落ちてしまったため、警察は主人公を容疑者というよりも、犯人と決め付けて追いかける。

経歴詐称がいつバレるのか、主人公が追われる殺人事件も絡み、全体としてはサスペンス要素が強い。
だが、不適合者の主人公と適合者ヒロインとのロマンスを挟み、ドラマとして緩急がある。
また主人公ヴィンセントとジェロームの危険な賭けが、共犯関係から友情に育つ。
その心の変化にも、注目してほしい。

そして、主人公の境遇に観客の私達が同情するのと同じように、主人公の周囲の登場人物もまた同情し、彼の正体を知りつつ協力していく…。

【協力者① アイリーン】

ヒロインのアイリーンは、完璧な仕事ぶりだが、それを鼻にかけない謙虚な主人公に興味を持つ。
主人公の謙虚さは、身分詐称を隠す隠れ蓑だと知らずに、プライベートを明かさないミステリアスな主人公にどうしようもなく惹かれて行く。

道路をたどたどしく渡る主人公の近眼に気づき、自分と同じ疾患を持つ者と悟る。
彼の正体が分かった後も、その努力に尊敬の念を抱き、警察に供述はしない。
必死で生きる者の熱意に、本気で惚れてしまう。

恋愛感情とは、子孫繁栄のために相手の遺伝子を求める本能だという説もある。
明らかに劣性の遺伝子を持つ人間と知りながらも、差別感情を超え、自らの気持ちに従うヒロインは次第に人間味を増していく。

この映画をキッカケにイーサン・ホークとユマ・サーマンは結婚した。
マネキンのような冷たさを感じる登場。
後半「風にさらわれた」と主人公が差し出した髪の毛を捨てた時の、温もりが宿るユマ・サーマンの瞳は、恋する女性の瞳そのものだった。演技以上の真実味があった。

【協力者② ジョセフ局長】

ヴィンセントの嫌いな上司を殺した殺人犯は、何とガタカの局長だったと判明する。

殺人の理由は、主人公の70年に一度のタイタンへの宇宙飛行のチャンスを潰してしまいかねないというものだった。

もしかしたら局長は主人公の正体に気付きながらも、不適切者だとわかっていながら、主人公の才能だけを評価していたのかもしれない。

【協力者③ ヴィンセントの弟アントン】

その殺人事件を捜査していた警察の責任者は、実は主人公の弟だった。
長い間行方不明で、死んだとばかり思っていた兄の体組織を殺人現場で発見した、その心情はどの様なものだったのか?
喜びと失望と職務の責任とで胸が張り裂けそうだったに違いない。

主人公は殺人の容疑からは解放されたが、身分詐称という罪は残っていた。
兄弟はついに対峙し、主人公は弟に、昔のように遠泳勝負を持ちかける。

弟は心臓に障害を持ち、寿命を上回っている兄に勝てば、タイタン行きを兄は諦めると思い、勝負に乗る。

しかし、主人公は実力で弟に勝利する。

弟は寿命が近い兄を、宇宙での過酷な任務で死なせたくはない想いがあり、地上にいて欲しい、出来ればその死を看取りたかったのた。
この遠泳勝負で、弟も主人公が言う可能性を信じたのだろう。
主人公は身分詐称では逮捕されない。
弟は捜査を止め、主人公の思うように生きろと無言で去っていく。


【協力者④ レイマー医師】
宇宙飛行の当日、搭乗前にこれまではなかった尿検査が行われる。
いつも検査していた医師も、おそらく主人公の正体を知っていたのだろう。

主人公も、この時ばかりはジェロームの尿を用意していなかったのか、自らの尿を差し出す。

そして、不適正者の表示が当然出るのだが、医師もまた主人公のこれまでの努力から、可能性を信じて表示を詐称する。

「息子が君のファンでね…。」
おそらく、医師もかなり前から主人公の努力を正体を知っていたのだ。
(劣性の遺伝子でありながら)凄い人がいると家族に話すほど、主人公を認めていた。

医師が主人公を送り出す。
主人公の努力に感心し、人は努力でどこまで成長できるか、人間の無限の可能性を信じ、主人公に託したのだ。

キリスト教徒ならば、免罪符を渡す神父のように、レイマー医師が見えることだろう。

【協力者⑤ 最大の協力者ジェローム】

主人公と出会ったことで、再び人生を謳歌し、親友となったジェロームは、自らの才能のある人生を放棄する。

それの友情はまるで主人公と一体になっていく感覚。
そして、主人公が夢を叶えたとき、ジェロームの夢も叶ったのだ。

彼は主人公が自身の身代わりとして今後も生きていけるように、自分の血液や尿を大量に残す。
そして自分自身は証拠が残らないように、焼却炉の中で焼身自殺する。

この自殺にネガティブな意味はない。

ジェロームは宇宙空間でのヴィンセントの死を確信していたからだ。
共に雲の上(宇宙と天国)に行こうという、ヴィンセントとの自己同一性から来るものだ。

30年で寿命が尽きるという医者の予言に抗って、なお生き続けていたヴィンセント。
宇宙での一年間のミッションを終え、地球に無事生還する可能性もゼロではないかもしれない。
もしかしたら宇宙空間の無重力が彼の心臓によい影響を与え、延命するかもしれない。

しかし仮にヴィンセントが地球に生還することがあったとしても、宇宙飛行士として困難なミッションをクリアした英雄として生還する可能性はゼロ。

宇宙に旅立ったヴィンセントには結末は二つしかない。

一つ目は、過酷なミッションに耐え切れず、心臓発作を起こし、宇宙で亡くなるというもの。

もう一つは心臓発作こそ起こさなかったものの、過酷なミッションの最中に強度の近眼であることがバレ、DNA詐称の重大犯罪人として地球に帰還するというもの。
プライベート空間のない長期間の宇宙生活でコンタクトレンズを隠し通せるはずもない。

ジェロームは旅立ちの日の朝、ヴィンセントに彼が地球に戻ってきたときのために用意した一生分の検査サンプルを見せる。

だが、よくよく考えると、この時点で既におかしい。
検査サンプルはわずかにアルコールが混じっていただけでエラーになるデリケートなもの。

そしてヴィンセントが再び地球に戻ってくるのは(戻って来れたとして)一年後のこと。
一年経年している検査サンプルが、検査に合格するはずがない。

もし、ジェロームが用意した検査サンプルが偽物だとしたら?
なぜ彼はそんなことをしたのか?
もちろんそれにも理由がある。

ジェロームはヴィンセントが旅立ったその日のうちに焼却炉に身を置いて焼身自殺をした。
その自殺は決して衝動的なものではなく、明らかに計画的なもの。
それは彼が遺髪を残したことからも伺える。

彼が一つ恐れていたことがあるとすれば、それは彼が自殺を企てていることをヴィンセントに気取られること。

ただでさえいろいろと問題を抱えているヴィンセントに自分のことで余計な心労を掛けたくないという友への気遣いである。

彼は心の裡では死を決意しつつ、その一方でヴィンセントに対しては「旅に出るつもりだ」と嘘をつく。

この心情は比較的誰にでも理解出来るものではないかと思う。

さらにもう一つ、ジェロームにはヴィンセントに知られてはならないことがあった。

それは彼が、ヴィンセントは二度と生きて地球に戻ることはない、と思っていること。
 
言葉では「お前なら出来る、やれる」とジェロームはヴィンセントを叱咤激励していたが…。
もっと決定的に訴える方法は何かはないか、それによって自分がヴィンセントは無事に地球に戻ってくると、心から信じさせるものはないかと、ジェロームは考えたのであろう。
その答えが大量の検査サンプルだったのではないか?

ヴィンセント自身それに近い感想を得たことだろう。
それこそがジェロームの目論見だったのではないか。
ジェロームはヴィンセントに少しでも平穏な心で宇宙に行ってもらいたかった。

実際その大量の検査サンプルを目にして、自分が地球に生きて帰ってくるとジェロームは信じていると思い、ヴィンセントは「僅か」に微笑む。

ほんの「僅か」だ。感激などしていない。
「旅に出る」と言ったジェロームの言葉の真意を感じとっているからだ。

ジェロームの焼身自殺の炎とロケットの噴射の炎が重なる中、ヴィンセントは穏やかな表情で宇宙に旅立つ。

ヴィンセントのその旅立ちは、死地へ向かうものであり、ジェロームの旅立ちと同義なのである。
まるで命の炎を燃やし尽くしたかのような切ない余韻が残るエンディングである。

このような物語の作風は、クリストファー・ノーラン監督にも共通する。
主人公は努力するが、それが報われない。又は報われるかどうか分からない。

どう思うのか、その結果は観客に委ねられる。私には切なさと虚しさが残った。

主人公の人生の選択した結果の切なさ、人生の目的に到達した後の虚無感。
2000年以降、勝者も敗者も同じ人間であり、結果よりも過程と選択が大事であると訴える物語(映画、小説、漫画に至るまで)が多い。

この映画は決して、ヴィンセントの目的達成を描くハッピーエンディングの物語ではない。
その理由を多くの方に読み取って貰いたい。
また、決してマイノリティの苦しみを上から目線で捉えて欲しくないと、この映画のファンとしては願うばかりだ。
>|