わたがし

アズミ・ハルコは行方不明のわたがしのレビュー・感想・評価

アズミ・ハルコは行方不明(2016年製作の映画)
-
 すごく良い物語を観ました。本当にすごく良い物語を観ました。意味わからんぐらいバカにされて、しかもそれが当然だと思うことしかできない環境があって、それに立ち向かう力さえもない「女性」が、渾身の力をこめて男にピストルの銃口を突き付けた時の快感。すごく良い物語を観ました。
 男はすごく頭が悪くて、でもその癖に要領だけはやたら良くて、本当は賢いくせに自分に都合が悪くなるとバカなふりをする。そんな男たちに振り回されて、精神的にボロボロになっていく女たちの現実の、それはそれはもうリアルな芝居の上に成立する、息を呑むほどにリアルな描写。コンビニの看板の光、車のヘッドライト、そして映写機の光。一瞬一秒その時にしかこの世に存在しない表情、空気感、それを捉えようと必死にもがくカメラ。胸が苦しくなってくる。
 蒼井優も高畑充希もあまりに芝居が上手すぎて泣きそうになった。複雑な感情の移り変わりをサッと表情ひとつだけで、サッと台詞の間だけで表現してしまう蒼井優。そしてジェットコースターみたいな感情をクリクリの目でガーッと人を殺すように表現する高畑充希。久しぶりに芝居でここまで感動した気がする。まさに天才の仕事。
 それにしてもこの映画、男としてどう受け止めれば良いんだろうという気持ちでいっぱいで、観終わった後の男としての改善策とかも考える気にならないし、純粋に「男ですいませんでした」以外に何もない。ひとつあるとすれば「誠実であろう」ぐらいかもしれない。
わたがし

わたがし