椿本力三郎

ケンとカズの椿本力三郎のレビュー・感想・評価

ケンとカズ(2015年製作の映画)
4.4
不器用なクズに必要なのは母性。
母親ではなく、母性であることに注意。
母性を実の母親に求めてしまうことは
むしろ自然な振る舞いであるものの、
母親とて人間なのだから
その希望や期待に応えられないことも多い。

ケンとカズは恋人の妊娠や母親の介護をきっかけに
「まともになろう」とするものの、
思考と感情の幅が狭い人が「何とかしなければならない」と焦れば焦るほどどんどん沼に落ちてしまう、そういう切なさ。
そもそも「まともになる」ことが「お金を稼ぐ」だけではない、という現実。それは手段であって目的ではない。どんな手段であっても「お金が稼げればよい」ということではない。
しかし、そこに気づけないのは、思考と感情の幅の問題。

昭和感満点の演出。
誇張と省略が効きまくっている作品であるが、
「ケンとカズ」のような人間は令和にもいくらでも存在する。
脇役であるものの藤原季節の安定感のある演技が
この作品の底を支えているように思う。
冒頭から最後まで緊張感に溢れている。