ちろる

走れ、絶望に追いつかれない速さでのちろるのレビュー・感想・評価

3.5
自分にとって大切な人も、ほかの誰かにとってはどうでもいい人だったりする。
大切な人を失って自分が崩壊しそうなっても、その哀しみを誰かにぶつけるのではなく、真正面から向き合っていくしか前に進む方法はない。
バカなことばっかりやって、言いたいこと言い合って、いつまでも笑い合える日が続くと思っていたのに、あいつはあっけなくこの世を去った。
「走れ、絶望に追いつかれない速さで!」
青臭い台詞も、よくありがちな青春の一ページも太賀という役者がひとたび演じれば、そのシーンは平面的なその瞬間のものではなく、過去も含んだ立体的なものとして入ってくる。
ご飯を口の中にいっぱいにほうばって、涙を流すシーンはたまらないほど胸が締め付けられる。
黒川芽以さんの演技がもう少しこの作品の世界にシンクロしてくれれば良かったのに、なんかよくわかんない演技のおかげで早い段階で冷めてしまった事は非常に残念。
理沙子がどれだけ薫を愛していたのか、そもそも愛してたのかの描写がすっぽり抜け落ちて、全く共感できない。
それでも何でもない空気感をそれなりにする叙情的な映像だけはこの監督の技術によるものなのかなぁ。
内容は至って普通、太賀の演技力と監督の空気感が悪くないだけに、物足りない部分が目立つ作品でもあった。
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