とんちゃん

走れ、絶望に追いつかれない速さでのとんちゃんのレビュー・感想・評価

4.2
主人公の漣(太賀)の大学時代に同居していた友人の薫(小林竜樹)が亡くなってから一年後、薫の両親から渡された一枚の絵をキッカケにその描かれたモデルの女性に会いに、薫の元カノの理沙子(黒川芽以)と一緒に北陸へ向かう事になった。
何故友人は自死を選んだのか
その答えを探しに…

見どころ
ラストシーンも好きですが、ここは太賀のすき焼きを一人で食べるシーンです。
今まで感情を表に出さなかった主人公が感極まり食べまくる姿がたまらない。
また少し離れたところでお茶をすするジイさんの姿も絵になって良いです。

東京に帰ってきた漣を温かく迎えた優しい声
「おかえりなさい」




もう一つの絵について(以下ネタバレ)



最初は気づきませんでしたが
薫は亡くなる直前に「太陽に向かって飛ぶ男」の絵を遺しています。
その絵を描いた場所は偶然にも一年後に漣と理沙子が宿泊した旅館。
しかも漣が泊まった部屋と同じなのです。

偶然と言い切る理由として、太賀と理沙子は岩場の後で砂浜で凧を上げている少女と出会います。その少女が泊まる所を案内したからですね。

更にもう一つの偶然
漣が中学時代の初恋相手と会った後にまたあの岩場に行きます。
そしてジイさんに誘われて、すき焼きをご馳走になる場所もあの旅館です。

そして漣が店に飾られた絵に気づきます。
薫の描くタッチで気づいたのでしょう。

前に少女が客である漣の布団を敷いた後に何か言いたげなシーンありましたね。
多分宿帳に記載された住所で、一年前に宿泊した客の事を言いたかったのでしょう。

一年前、薫が宿泊した部屋に布団が畳まれて置いていった絵を見つけたのはその少女。
始めの方にもそのシーンは出てきますが、ほんの少しで女性というだけで誰なのかは解りませんでした。

結局、薫が自死した理由についてはハッキリしませんが
その「太陽に向かって飛ぶ男」の絵を発見してからの漣は何か答えが見つかったかの様な清々しい感じが伝わります。
後にその絵を見ている理沙子の表情も和らいでいます。
薫が伝えたくて、導いた偶然(伏線)だったのだと思います。

蓮はこの偶然に気づいたと思いますが
館主であるジイさんに訊ねたりするシーンはありません。
観ている側の想像に委ねているのがニクイ演出ですね。

ちなみに宿泊先とすき焼きを食べた場所が同じと言い切るには理由があります
漣と理沙子が泊まった先の名前が「大岩荘」富山でその名前の旅館を調べたら漣が絵を見つけた同じ食堂の写真が掲載されていました。(現在は閉館しています)

最後、これはどうでも良い事ですが
一年前、薫は岩場で笑顔でしたよね。
太陽が海から上がってくるものと思ったのでしょうが、本州で日本海から太陽は上がってきません。陸から上がってきます。
それに気づいた照れからの笑みだったのでは無いでしょうか。
そんな気がしました。