ゆきまる

灼熱/灼熱の太陽のゆきまるのレビュー・感想・評価

灼熱/灼熱の太陽(2015年製作の映画)
2.9
クロアチア旅行の前に、歴史の勉強のために鑑賞。
旧ユーゴスラビアでは、スロヴェニアに次いで経済発展しており、91年に独立を果たすもセルビアとの泥沼の内戦、血みどろの戦いにより多くの犠牲者を出した国。そんな民族と宗教の対立により深く傷ついた国の、再生と復興、希望の兆しと影を描く。91年から10年ごとに、クロアチア人とセルビア人カップルの関係を通して、時代が変化していく様を描くのはとても興味深かった。

91年のエピソードが最もインパクトがあり、鮮烈な印象を残すが、あとの2話は、人物の心理描写が分かりづらく、テーマも重いため、見るのに根気がいる作品でもある。

ただ、2011年のエピソードの最後がとてもよかった。
大学生のクロアチア人男性は、交際していたセルビア人彼女を親の反対により捨てた過去を持つ。そんな彼が彼女のもとに許しを請いに行くと、彼女は彼に背を向け、玄関のドアを開けたまま無言で去る。彼らには、幼い子供がおり、暗い過去を押し流し、未来へ歩んでいくメッセージに感じ、とても印象的だった。

クロアチア人の友人に、現在の民族対立の禍根について聞くと、今の若い世代間では、ほとんど問題にならないことが多い、と話していた。この映画に、2021年のエピソードを付け加えるなら、間違いなく最も明るく希望にあふれた話になっただろう。
クロアチアの30年の歩みに思いをはせる映画だった。
ゆきまる

ゆきまる