リコリス

正しい日 間違えた日のリコリスのレビュー・感想・評価

正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)
4.4
キム・ミニを活かすための映画。「なぜ、そんな目で見るんですか?」記憶というか、内省? 監督の事実が虚構に練り込まれているのかな? あらゆる可愛らしさの連続を撮りたいという、執着を感じる。

会話にしても、相手に届かない、自分のためのヒジョン独り言、初めてあった同士なのに、相手に何を聞いてほしいのか、彼女が考えることを確認したいため?の宙に浮いた会話。分かりもしないのに肯定して監督相づち。彼女は絵を描く姿から食べる姿まで見せる(先に監督の映画を見てるから、自分の底を見せる抵抗がないのか? オイオイ、深い底まで晒し過ぎ)。可愛らしい女性を前に、話なんて要らない監督(笑)いつのまにか、詩人と農民カフェで自らの芸術観から生き方まで語る羽目に。監督の結婚話を聞いた時のヒジョンの輝きが落ちたような変化。ヒジョンにとっては、とっておきの話をしたのに、監督にとっては繰り返し。そして二日酔いで自分の不満を他者にぶつけるが、評価されると救われた気持ちで去る。

あの時は正しく、今は間違い。小学校のオルガンみたいな音楽。自分の絵を見つめるヒジョンは、ものすごく遠くに行く。「バッカスレディ」のユン・ヨジョン母さんは本当にそこらにいそうで、梵鐘に手を合わせるところもいいなあ。今は正しく、あの時は間違い。

自分の生活をしっかり持っていて、相手を不必要に自分に引き入れないヒジョン。心からの感想を言う監督。別にヒジョンに気に入られようとも思わず、率直な感想を語る。それは確実にヒジョンに届き、彼女を怒らせる。でも、いつの間にか監督とヒジョンは近づいていく。シミジミゆっくり相手の言葉を拾って。とどめがいつもの必殺「オンナの前で泣くオトコ」。彼女のほうが冷静で大人。指輪(本当に店の前で拾った?)彼女も理解して貰えた、この夜を忘れないだろう。監督は女性たちのおかげで、どんどん重荷を捨てて服まで脱いじゃうけれど、下心はない。ヒジョンも別れ際のキス。二人して無邪気になった夜(早く帰れば、監督…)そして皆が味方になってくれて映画と彼女への感謝を残してソウルに帰る。初めて前に前に進むような音楽。つもった雪の中を歩いて去るヒジョンは映画に何を見たのかな。
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