秋日和

正しい日 間違えた日の秋日和のレビュー・感想・評価

正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)
4.0
もしも自分が単なる「絵を描く人」だったとして、突然見知らぬ男に声をかけられたらどうだろうか。その男がどうやら名前だけ聞いたことのある有名な映画監督だったらどうだろうか。握手のために手を差し出されたらどうするだろうか。寒い日のお昼時。自分ならば絶対に手袋を外したりなんてしないと思う。丁度、この映画のキム・ミニみたいに。
人のビニール袋の中身を覗いたり、絵の具が服についてて可愛いねと囁いたり、自分の飲んでる珈琲を勧めてみたりと、中年映画監督のデリカシーのなさがどんどんと降り積もっていく。極めつけは人のアトリエにずかずかと足を踏み入れた挙げ句に言い放つ、彼女の絵に対する感想だ。一体どこまで無神経なのか。けれどホン・サンスの映画でああいう男が出てくると、今回は果たしてどれだけ酷いのだろうかとワクワクしてしまうから困る。
「正しい日」と「間違えた日」、あり得たかもしれない二つの未来の反復と差異で描くこの映画で、とある瞬間、決定的な反復が起こる。そしてその反復を持って行き方に、とてつもなく惹かれてしまうのも仕方がないのかもしれない。映画の終盤で出逢う二回目の「握手」とその外された手袋を見て、観客は確かな「正しさ」を感じるのかな。
個人的ホン・サンスポイントとして、坂道が出てきたのはとても大きな加点となった。やっぱりこの人の映す坂道は悲しくて大好き。お預けされた口へのキスが、下手に坂道以外の場所で達成されなくって良かった。お酒と坂道があれば映画は撮れる。