じぇれ

バジュランギおじさんと、小さな迷子のじぇれのレビュー・感想・評価

4.5
【突き抜けたベタには涙腺を崩壊させるパワーがある】

親とはぐれた少女は正直さだけが取り柄の大男と出逢う。万策尽きた男は国境を越えて少女を家に帰すことを決意するのだが......

いや~、これはズルい!
「これは突き抜けてるからベタでもいいの。すごい! ファンになりました!」って、誰かさんも言ってましたよね?←言ってません(笑)

演出はさほど上手だとは思えないのですが、インド映画特有の踊りがバッチリハマり、楽しいダンスを見ながら涙が。
また、主要人物のキャラもよく、重苦しくなりすぎる手前で、笑いを差し込んでくるんですね。
サルマン・カーンと子役の醸し出すゆるい雰囲気も相俟って、ほのぼのとしたロードムービーに仕上がっています。

しかし、同時にとてもシリアスな問題も描いています。
インドとパキスタンは元々は1つの国。しかし、第2次大戦後のイギリスの政略によって、2国に分離する事態に陥りました。
片やヒンドゥー教を中心としたインドに。片やイスラム教を中心としたパキスタンに。
以後3回も戦争していて、もはや再統一が困難なほど緊迫した関係になっています。
(これは本作に最低限必要な基礎知識についての大雑把な説明なので、詳しく知りたい方は各自でお調べください)

こんな悲しい歴史を背景に、バカ正直なインド人が真っ正面からぶつかり、冷えきった関係を個人レベルで修復していく様は、もちろん絵空事です。
現実にはこんなに上手くいくはずがありません。
しかし、映画は絵空事でいいんです。力強くベタの正面突破を突き進めた結果、私たち観客にも希望が生まれます。
「絵空事でも信じたい」
「私も変わりたい」
そんな小さな変化がいつの日かうねりとなって、両国が、いや世界がほんの少しでも平和になる未来に繋がっていくのかもしれません。
大切なのは、人任せではなく、自分が動くこと。
おじさんと女の子のかわいらしい交流から、大事なことを思い起こさせてもらったじぇれなのでした。

というわけで、私はこの映画を、老若男女問わずすべての皆さんにオススメしていきます。
笑って、笑って、ちょっぴり泣いて......この2時間40分の小旅行は、アナタの心にもあたたかくも力強い何かを残してくれるはずです。
是非観てください!
じぇれ

じぇれ