河豚川ポンズ

バジュランギおじさんと、小さな迷子の河豚川ポンズのレビュー・感想・評価

4.4
正直さと愛と信仰で国を動かす映画。
最初は「マイル22」を先に観に行こうと思ってたけど、周囲とネット上の話題性重視でこっちを先に観ることにしたら、期待通りのインド映画だった。
上映時間のせいか、まだ公開週なのに自分の行った映画館は昼前と夕方の1日2回しか上映してないのは不便すぎる。

パキスタンの山間の小さな村に住むシャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は、好奇心旺盛で元気な6歳の女の子だったが生まれつき話すことが出来なかった。
両親は気の毒に思い、インド、デリーの聖者廟で祈りを捧げれば治るかもしれないと、母親(メーヘル・ヴィジ)とともにインドへ向かうことになる。
無事にお祈りもしてその帰途、夜中に停車していた最中にシャヒーダーは外が気になって列車を降りてしまう。
そして不幸にもその最中に列車は動き出してしまい、声を出すことのできないシャヒーダーは取り残されてしまう。
慌てて近くの貨物列車に乗り込むが、その列車はパキスタンとは真逆のインド行き。
夜が明けて着いたのはクルクシェートラという町、シャヒーダーは途方に暮れる中、彼女はハヌマーン神を熱心に信仰するインド人のパワン(サルマン・カーン)と出会う。


生まれつき言葉を話すことが出来ない少女と、ハヌマーン神への信仰から噓を絶対につけないおじさんのコンビが、ビザも無しに国境を越えて家を探すという縛りプレイにも程があるストーリー。
しかも超える国境はインドとパキスタン、途轍もなく仲の悪い関係の2国間では、たとえ話せても嘘がつけても普通に難しいレベル。
そんな状況で周りの人を巻き込んで助けを得ながら、時には警察に追われながら、何とかパキスタンの家まで目指すロードムービー兼ハートフルコメディ兼社会派ヒューマンドラマ。
そしてそこにインド映画恒例のダンスや歌も合わさって、徹底的にエンターテイメント作品な仕上がり。
相変わらず160分という長尺だけど、なぜかインド映画だと自然と苦しくなく観られるのが不思議で仕方ない。
「JFK」なんか3回に分けて観ても辛かったのに。

この映画の魅力はとにかくバジュランギおじさんや女の子のキャラクター。
6歳の女の子が可愛らしいのはそりゃあまあそうでしょって感じだけど、バジュランギおじさんはとにかくまっすぐでかっこいい。
そもそも見ず知らずの女の子を成り行きとはいえ、命の危険を冒してまで隣国に送り届けるなんてするはずもないし、その道中では嘘はつかないし曲がったことは許さない、そして出会った相手へのリスペクトは忘れないという人間性。
初登場の瞬間から自己紹介兼ダンスの披露ですでにインパクトの塊。
女の子は一目見て、よくこの人に着いて行こうと思ったな。
他にも途中で出会う記者やモスクの先生、バスのお兄さんなどなど、少しムカつく役も出てきたりもするが、それ以上に2人のために色々してくれる人たち、その人たちの言葉1つ1つが心に残るものだったりする。

直面する問題が宗教や政治、国家と難しい問題が立ちはだかるが、それに対して作り手なりのささやかな答えが込められてる。
言うは易く行うは難しなのでそれを何もなしに褒め上げることは出来なかったけど、せめてフィクションの中でぐらいこんな幸せな答えが通じても良いのかなと思った。