乳酸菌

バジュランギおじさんと、小さな迷子の乳酸菌のネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

この映画、ロードショー期間は短く、しかも1日1回の上映で鑑賞できる機会が作れなかった人も大勢いたのが残念な、しかしとても良質な映画なのでこれこそ口コミで広がる系の映画なのにと。

端的に言えば登場人物、みんな良い人、ハートフル感いっぱい。ベタといったらそれまでだけど、だからこそ中盤からラストまでぼろぼろ涙を流していた自分が。

とても実直な主人公が親とはぐれた口がきけないハンデを背負った6歳の素直な女の子との故郷探しのロードムービー。

主人公のパワンはインド人、対して女の子はパキスタン人、知っての通り両国は血を流し合う戦争を行い、現在も緊張状態。お互い核を持っているしね。

たまたま出会った2人、ハンデとか親が見つからないので仕方なく世話をしていたらパキスタン人と知って、何とか母国へ戻そうとインド国内で手を尽くすもダメ、しかし人身売買されそうなところに遭遇して、一念発起、自力でパキスタンまで送り届けるぞ!となり2人のハードな故郷探しの旅が始まる。

例えば国境警備隊の隊長、この手の人はお約束として堅物って設定だけど、この映画の良いところ、個々が自身の良心の判断で動き、行動する所が非常に良い感じで結局、2人を見て国境を通してしまう辺りから涙がポロポロと。

そこに愚直なほど信心深いパワンが絡んでくるからより一層心に訴えかけるものがあり、正直リアルの世界ではこんな人達いる訳ねーじゃん、とは思うし、それは悲しいことだけど、だからこそ劇中の人の優しさが引き立てられるという感じ。だから泣いちゃう。

世の中、悪人だらけ、人を騙す嫌なニュースばかり、でも、主人公のパワンは宗教上の理由から嘘はつけない(途中やっちゃうけど)、それも実社会の猜疑心の横行するこんな世の中だからこそ、心に訴えかけるものがあり、そこでまた泣く。

宗教といえば、パキスタンはムスリムの国、パワン達がモスクに入るのを躊躇っていると、そこの主が、ここは(宗教関係なく)誰でも入れるよと、いう辺りも、その人もとても良い人、泣きポイントの一つだったりする。

ラストのネットに拡散させる為に一介のしがないジャーナリストが訴えかける台詞は心打つものがとてもあり、泣け泣けと言わんばかりの名シーン。

せめて、映画って世界の中だけでも良いから一時的に非現実的日常を体験したい、そんな当たり前の事を改めて実感させられた、そんな作品でした。それで、リアルな日常にプラスになる、ちょっとだけでも心が穏やかになるなら、やっぱり映画っていいなあと再認識させられる。
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