こたつむり

バジュランギおじさんと、小さな迷子のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.7
♪ 心配ないからね
  君の想いが誰かにとどく明日がきっとある

お願いです。助けてください。
本作は「パキスタンの少女がインドで迷子になってしまい、愚直で一本気な主人公が助ける」なんて物語なのですが、最初から最後まで涙腺が弛みっぱなしで目と鼻が痛いのです。困った話ですよ。

もうベタベタの王道ですからね。
しかもストレート全力投球200㎞/h。
あまりの剛球にバットは振り遅れ、ヘルメットは飛び、心臓は捻じれて、称賛の嵐が止まらないのです。誰かが「これからはインドの時代」と仰っていましたが、まさしくそのとおり。この勢いは誰にも止められません。

それに懐も深いのですよ。
インドとパキスタン。不倶戴天の仇の筈なのに。真正面から受け止めてグリグリと抱きしめちゃうのです。しかも、しかもですよ。宗教についても受け止めちゃいますからね(インドはヒンドゥー教、パキスタンはイスラム教)。ガンジス川のように雄大な筆致なのです。

だから、スタッフクレジットは英語なのでしょう。“世界のすべてが此処に在る”と言わんばかりに、何もかもを許容しているのです。ゆえにインド映画らしい力強い音楽から西洋のポップミュージックの影響も感じました。個人的には、主人公と彼女の恋が進展する場面の曲が大好きです。

あとねえ。少女役の娘も可愛いのですよねえ。
撮影時は7歳くらいだったのでしょうか。泣いたり笑ったりする姿が自然なのは見事な限り。日本に芦田愛菜さんという天才子役がいるように、インドにはハルシャーリー・マルホートラがいるのです。

まあ、そんなわけで。
愚直で純真な優しさを描いた物語。
劇中で「憎しみは伝播しやすいが、愛には見向きもしない」という台詞がありますが「いやいや、そんなことはない」と力強く言いたいですし、それを実践するために、さあ、観れ。やれ、観れ。
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