ハマジン

ウィンダミア夫人の扇のハマジンのレビュー・感想・評価

ウィンダミア夫人の扇(1925年製作の映画)
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『結婚哲学』からさらに角を取って巧妙に毒を忍ばせた洗練の極み。字幕ゼリフを最小限までそぎ落しているにもかかわらず、しぐさと表情と小道具の意味作用によって、オスカー・ワイルド原作の機知に富んだ会話とニュアンスの錯綜を成立させてしまう信じがたい作品。サイレント映画の1つの到達点だと思う。特に競馬場のシーンは圧巻で、謎の上流婦人をめぐるゴシップの氾濫を、双眼鏡のマスキングとディゾルヴで示される好奇な視線の集中によって見事に描き出している。

一歩間違えば悲惨な結末になりかねないところを薄皮一枚つなげて危うく回避しつつ、ひたすら遅延と迂回を重ねていく作劇もあいかわらず絶品。クライマックスは何と手に汗握る脱出サスペンスだった。

物語を引っかき回す女性・アーリン夫人の「金も名誉も母親としての愛情もどれも大事、1つだけを選ぶだなんて真っ平御免」と言わんばかりの豊かな欲望を、なめらかな表情の襞で余すところなく表現してみせるアイリーン・リッチの演技に脱帽。ある「衝撃の告白」の後、証拠書類と傍に置かれた「娘」の写真を見せながら、憂鬱な顔で約束手形の束をそれとなく示すことでウィンダミア卿を遠回しに「脅迫」する、洗練されたエゲツない強請の手腕に舌を巻いた。