なっこ

ジャッキー ファーストレディ 最後の使命のなっこのレビュー・感想・評価

2.9
誰もが知っている世紀の大事件、ケネディ暗殺。その舞台裏で何が起きていたのかを、
あえてジャッキーの視点から映し出す。

彼女はもっとも側でその瞬間を目撃した1人でもあり、狙撃というその危機的状況を体験したサバイバーでもあり、

そして最愛の夫を亡くしたひとりの女性でもある。

語りの場は、事件後のとある屋敷の中でひとりの記者とふたりきり。時折煙草を吹かしながら静かに進められる。時系列には進まず、断片的な語りが続き、時は行きつ戻りつ重なり合う。まるでフラッシュバックのように、記憶の糸が絡み合う、この揺れが彼女の心情をよく反映していて、少しずつ心を整理していくその様子はとても現実的な気がする。

人は、その死によってこの世から消えてしまう。けれど、本当の死は、忘れ去られることによって完遂される。

彼女のファーストレディとしての最後の仕事は、夫を偉大な大統領として完璧に送ることだった。

華々しい舞台は終わったのだ、さぁカーテンコールに応えよう、そして美しくこの舞台を去って行こう。

大画面に映し出された泣きむせぶその顔はジャッキーそのものに見える瞬間もあるけれど、レオンのマチルダにも見えたその時、ああ、いい女優さんになったなあと嬉しくなってしまった。

舞台を下りた彼女は、ひとりの女性に戻った。そしてひとりの母親として日々為すべきことを続ける、癒えるはずのない大きな悲しみ抱えて。

ただそれだけのこと。

その彼女の苦悩と孤独に向き合う。
その人間らしさを知ったときに、とても遠いはずの彼女の存在がとても近くに感じられた。先に逝った大切な人の死と向き合うことは、辛く孤独であること、そしてそれは誰にでも起こり得ること、なのだと。

彼女が手厚く葬ったのは、墓に眠る者たちだけじゃない、妻として生きた自分自身の数年間もそこには含まれている。
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