垂直落下式サミング

マッスルモンクの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

マッスルモンク(2003年製作の映画)
4.0
アジアの至宝アンディ・ラウが筋肉モリモリマッチョマンの変態を演じる映画。ハリウッドの超一流特殊メイク職人を呼び寄せるなどして、マッチョボディスーツ製作に巨額を費やし誕生したバカ映画だ。
製作陣が一発キメながら作ったとしか思えない気の狂った演出の数々が全編に渡って冴え渡っており、私も色々な映画をみてきたつもりだったが、苛立ちをつのらせた主人公がロッカーをワンパンで破壊し粉々にするというのはさすがにはじめてみた。
物語上、主人公がマッチョでなければならない理由は見出せなかったし、アジア人でああいう筋肉の付き方をする骨格の人は少ないので、実際かなりの異物感がある。彼が歩いているだけでもう可笑しい。
画面はバカなのに不穏な空気を孕みながら進行し、アクションにコメディにラブロマンスにとが共存しながらも、最後まで作品のトーンを定めずにスチャラカな迷走を続ける怪作なのだが、これまでの変さをすべて打ち流す観念的なラストと、主題歌の沁々としたバラードが感動的なため、変な涙が頬をつたって流れ出してしまう。
自身の業を受け入れ、背負い、向き合い、赦すことで、彼は悟りに似た境地に到達するのだが、導きだしたその真理は彼に筋肉との決別を迫る!筋肉か!愛か!本作は、円環する輪廻の理の中から、大は小を兼ねるという諺に一石を投じている!