matchypotter

海賊とよばれた男のmatchypotterのレビュー・感想・評価

海賊とよばれた男(2016年製作の映画)
3.8
《“とある”芸能事務所に思いを寄せて》Vol.2

「国岡のもんよぉ!油持ってきたけぇ!」

実際の出光興産をモデルとした戦前、戦中、戦後を石油産業で生き抜いた1人の男とその魂に揺さぶれてついていった仲間たちと時代の話。

『海賊とよばれた男』
百田尚樹×山崎監督×岡田准一。
『永遠の0』トリオ。

「仕事はないない言うもんではないけぇ。ないなら作るもんよぉ!」

“士魂商才”、侍の心で商売する。
決して汚いことはせず、大きな力に屈しない。
当初から掲げてたこの社訓を最後まで突き通した男の生涯かけた商いの物語。

突き通すことだけがビジネスにおいて正しいか、は置いておいて、この激動の時代で、小さな会社が自由な商売を目指すためには少々の強引さと勢いがなくては会社と言う舟は動かない、動けない。

身の丈を知り、手の届くところで、こじんまりと日々を生きていくのも良しだが、この先々の日本の経済、生活に石油が不可欠であり、自分にはそれを日本に運び、商いをする情熱があり、自由で大きな仕事ができることを夢見て走り出す。

最初は街の商店みたいなところから始まり、そこから海に出て、「海の上で油を売る」。

そんな前人未到の、前代未聞の商いから“海賊”と呼ばれ、何かと既得権益や世界的大企業から行く手を阻まれる。

相手からすれば、決して大きくない会社だとしても、それだけ“止めないとヤバい奴ら”だと思われるほどの強き情熱とハートを持った男。

「博打やとぉ、、、これを博打言うなら、こん会社はずっと博打ば、打ち続けてきたんや」

店先で油売る会社が船買って沖に出て海で直接軽油を売ったり。
満洲までいって既得権益の大手メジャー石油会社に一泡吹かせて恥かかせて、海外販路を作ってきたり。
本来石油を売る、つまり営業職の人間に戦後の日本の地下タンクの油さらいをさせたり。
作った超大型タンカーでイランまで乗り付けさせて買い付けてイギリス戦艦とあわやの事態を招いたり。

まさに、これすなわち、“博打”。

法の抜け穴探しだったり、危険すら伴ういろいろ紙一重の仕事の数々。
現代で、ろくに説明も受けずに新入社員が入ったら「ブラックだ!」と言われかねない会社。

でも、彼の情熱と、それを分かった上で、やらねば自分たちの思いは届かないんだ、やりたいことはできないんだ、とみんなで同じ方向を向けたことと、この時代だからこそできた、いや、やってやった彼らなりの博打。

それすなわち、“挑戦”。

戦中、戦後。世界的にも色々大変で、日本にもGHQが占領統治を敷いてる中で、“士魂商才”を貫く難しさ。
既定路線、既得権益に屈せずに道を切り開く勇気。

なかなかゴリゴリオラオラしてるのを少々美談にしてるところや戦争部分や難しい企業の財政や拡大ドラマはサラッとしている傾向があるから、人によっては「え?そんな感じ?」みたいな部分はあるにはあるような気はする。

けれど、この作品はそういう“例の倍返しドラマ”みたいなことではなくて、このがんじがらめの日本の経済の中で、諦めずにピンチをチャンスに変えてきた男の生き様を見る映画だと思う。

年代やパートが少し読書してるような感じで前後する進行なのだが、どの年代でも、どのパートでも出し惜しみのない、その部分だけで十分映画1本撮れるキャスト達の応酬は堪らない。

出光興産、すげぇわ。
給油の際はいつも大変お世話になっております!
これからも引き続きよろしくお願いします。
matchypotter

matchypotter