くりふ

100万年地球の旅 バンダーブックのくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【1978年手塚の旅 ワンダーブック】

アマプラ見放題で出てきたので。日本初の“2時間アニメ”。でもコレ、TV放映のみだったと思うが、カテゴリはココ、映画でいいの?

見ていたら、若干残っていた、当時の記憶が蘇ってきました。

日本初の、日本が誇る欺瞞企画“24時間テレビ”第1回での放映。1978年8月末。子供にとっては、本作のみが引きでした。実際、視聴率は番組内最高の28%を記録したそうですが。

この年は6月末に『スター・ウォーズ』が公開されましたが、手塚センセは待ちきれず、前年末に渡米して見ており、その影響下で4月から『未来人カオス』の連載を始めています。

メカデザインなどにナルホド、と思ったものですが、中身はもう、興味が薄かった手塚マンガそのままで、『スター・ウォーズ』を見た後では、より興味を失いました。

が、『バンダーブック』の方は、“2時間アニメ”という枠が斬新だったので、見続けられた覚えがあります。でも中身はまるで覚えておらず、面白かったのかさえ、記憶にない…。

今回、見直したら…やっぱり中身は、昭和なトホホだった。が、世の中史と手塚史から見ると、貴重な道しるべだったのか!…と感じ入ってしまった。

TVアニメの方法論で、2時間(CM時間抜くと90分)引っ張ったのはお見事。画の完成度としても、時に驚くほどの煌きを見せます。…特に、女性キャラの艶めかしさ(笑)。

『スター・ウォーズ』は、本作には好影響しましたね。荒唐無稽ながら、前面に立てる楽しさでお話を数珠つなぎし、TV枠ならワンダー!と高揚できる。手塚さんの作家性と、エンターテイナーとしてのバランスが見事だと思い、改めて、スゴイ人だったと感じ入る。

“公害”がまだ、社会問題で尾を引いていた時期だったかと。環境破壊のテーマを説教くさいほど盛り込んできたのは、お茶の間向けのアニメとしては、これでよかったと思う。

逆に、女性キャラがやたら脱ぐのは当時だからこそ!(嬉) “乳首リング”なんて、いま見るとギョッとする。一方、女体の生々しいメタモルフォーゼは、手塚アニメならではでしょう!

根底で蠢く手塚エロスは、大人の堪能どころ。女性軽視でなく賛嘆と捉えたいが、女の動物的…よりもモチモチな肉感と、植物的(≒人形的)な、受け身での密かな誘いに、ふと惑う。

その危うさを、坂口尚さんのキャラデザでクールに抑制しているな…とも思います。

あと、音楽が大野雄二さんで、冒頭こそ壮大に、SW風に開幕しますが、気づけばルパン風になっているのがまた、楽しい。

テーマを強弁しすぎたのか、活劇としての盛り上がりは半端でしたが、初の“2時間アニメ”としては上出来でしょう。この枠は、暫く手塚アニメが継続することになり、“2時間アニメ”自体、他でも通常営業されるようになりました。やはり手塚さんは、先駆者でしたね。

本作、いまの技術でリメイクしたら、むしろ新鮮かもしれない。

<2023.3.2記>
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