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雪崩のENDOのレビュー・感想・評価

雪崩(1937年製作の映画)
3.8
『山の音』に構造が似ている。父が道徳心から嫁を庇う。人を信じきっている無抵抗な者には負ける。かつて娘のように可愛がっていた息子の元・婚約者でありまだ密会している愛人・弥生(江戸川蘭子)を説得する方法は綺麗事と侮蔑が入り混じって気持ちが悪い。五郎は只々醜悪。父は息子を淡々と痛罵する。『紙のような知恵。無謀な行動。お前は正直に汚い行動を取る行為よりはるかに卑しい。下層の理由なき悪の方がもっと美しい』薄っぺらな真実。高等遊民の息子は非力。結果的に地位は捨てられない男の卑屈さ。最後は心中に見せかけて妻を手にかけようとさえする。妻の余りの従順さ無抵抗さに逡巡してしまう。
モノローグで紗が降りて暗くなる。雪崩ではなく簾映画だとは言い得て妙。ストーリーはフィルム・ノワール。五郎が自分自身の正義を疑わないことで全ての行為を正当化する犯罪者の心理だ。成瀬作品の佐伯秀男の酷薄な人間性は震えますね。成瀬監督は富豪の家を舞台にすると途端に生硬な感じになるなぁ。不思議なほど蕗子の内面は掘り下げられず、弥生の心理に重点が置かれておりこの演出は良い。
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