zhenli13

雪崩のzhenli13のレビュー・感想・評価

雪崩(1937年製作の映画)
3.5
長台詞が映画の邪魔をしない映画。

汐見洋演ずる父が『山の音』における上原謙のように徹底したゴミカス息子(佐伯秀男)を叱責する。淡々と淀みない豊かな語彙の説教はグーの音も出ないほど正論(すごく良いこと言ってる。責任を回避し続ける自分なんかヒィと裸足で逃げたくなる)だが、ゴミカス息子は自己愛と自己正当性で武装し滔々と論破しようとする。このMCバトルシーンは非常に面白い。このお父さんの台詞聴くためにもう一度観たい。

ゴミカス息子のモノローグになると画面に暗いフィルターがいちいちかかるので笑ってしまう。まるで他人の意見を受け入れないことを示しているかのよう。

成瀬巳喜男のゴミカスの描き方はほんとに観る者の心を蝕む。ただただ自分を守ろうとするゴミカス。女への擁護も無い。ポリコレに落とし込むことなく、ありのままのゴミカスとそれに引っかかり逃れられない者たちのグダグダを描く。
ただ『雪崩』のヒロイン霧立のぼるはひたすら従順で純真な存在。高畠華宵の少女像の美しさ。
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