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アトリエの春、昼下がりの裸婦のemilyのレビュー・感想・評価

3.5
1969年韓国。ベトナム戦争への軍隊派遣で揺れる韓国。難病に苦しむ彫刻家と彼を励ます妻。創作意欲を取り戻してもらうため、妻は村で若い女性ミンギョンを見つけ、モデルとして雇う。夫は徐々に創作意欲を取り戻し笑顔が戻ってくる。同時にミンギョンも夫からの虐待を受けて苦しんでおり、彼女も徐々に前向きになっていく・・・

 絶妙な光加減がミンギョンの曲線美を艶めかしく描写する。現実の夫と子供達との貧困の日々、彫刻家が見せてくれる穏やかで夢心地の世界。じっとりと髪の生え際に汗をかきか細い少女がその曲線美に女の美しさを露わにしていく。無表情ながらも笑顔を取り戻していく彫刻家、そんな彼をただ見守る妻。アトリエには一切近づかない。家とアトリエをつなぐ、緑に包まれた一本道・・そこは現実と夢をつなぐ道なのかもしれない。妻は女としてたくましく、どんな時も笑顔で夫のために尽くし、深い愛で包み込んでいる。

 やさしい音楽が寄り添い、湖畔に照り付ける光が、ワンピースから覗く素肌を煌々と照らしつける。エロスというよりも素肌美を艶めかしく映しだし、美しさにはその人の人生と性格が鏡のように反射されていることを見る。妻が誠心誠意尽くしてきた愛では夫は救われない。彼の心を動かし他ミューズはミンギョンであり、その美は男の固定概念を翻す。

 自然美×素肌美。交差する3人の思いと、それぞれの愛の形。日々の色を辿りながらやさしく紡ぎあげる、徐々に縮まるそれぞれの関係。人を変えるのは人である。同じく時を過ごした人ではなく、新しい出会いが人を変えるのだ。

 大事なのは見た目の美しさではなく中身の美しさである。外見はただの器でしか過ぎない。芸術や自分の夢中になった物が人生を超えてしまうことがある。しかし芸術が人生を超えれるのはやはり基盤となる人生があるからである。そうしていつかは気が付くのだ。大事なのは人生そのものであり、それがあるから芸術も成り立つということ。
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