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さざなみのやのレビュー・感想・評価

さざなみ(2015年製作の映画)
4.3
ベッドで抱き合って寝ても、夫は昔の女の話をする。それは過去のことだからと言い聞かせ、妻は切なく思いながらも夫に話を合わせる。真夜中のリビングでダンス、束の間の幸せだ。しかし、そのまま久しぶりに体を交わらせるが、夫は妻を見ようとせず、呆気なく果ててしまう。妻は優しく夫を受け入れるが、その夫は妻を顧みようとしない。夫の口からは、二言目には「彼女」の話が出てくる。妻は少しずつ落ち着きを失っていく。

1週間という時間が短いようで、気の重くなるような長さでもある。しかも、妻の悩みは続くかと思うと、気が滅入る。夫の現在(いま、つまり妻との日常)が遠のいていき、夫の過去がリアルに浮き上がってくるのも、いたたまれない。彼女の抱える不安は、青春時代に抱くような淡い嫉妬心のようにも思えるし、いささか不憫でやり場のない思いに少しの絶望も見出せてしまう。

作品を通して静寂ながらも、いつか激情に駆られてそうな彼女の危うさが至極うまく演出されていた。カメラの焦点が基本的に彼女にしか合っていないこともあって、息が詰まりそうだった。
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