KnightsofOdessa

髪を短くした男のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

髪を短くした男(1966年製作の映画)
3.5
No.471[最初からこれ以上短く出来ないくらい髪のないおっさんの不条理劇] 70点

某動画配信サイトでオランダ語字幕しかなかったと思ったら普通に英語字幕あったので見てしまった。あんまり理解できてないのは英語字幕だったからなのか説明不足だったからなのか判別できないが、確実に言えることは本作品が変な映画であることだ。

見るからに間抜けで実際にもヘッポコな演技学校教師ゴヴァートが女生徒に惚れて尻を追いかけ回す前半と、彼女を忘れようと裁判所の書記として転職し、知り合いの医師に連れられて腐乱死体の解剖をしに行った帰りに再び女生徒に出会う後半で構成されている。繰り返し構造の間に挟まれる腐乱死体の解剖が本当に意味不明だが(多分魂の話とかしてた)、結局は"人間は満たされぬ欲望の悪夢に魘され続ける"という主題に終止する。
と思いきや、突然不条理劇に巻き込まれ、我々は何が真実であるかを見失い、ゴヴァートはアイデンティティの端境を失って虚無に堕ちる。

訳の分からない死体解剖シーンの絶妙な嫌悪感は匂いすら伝わってくる繊細さを持っている。そして初登場時から髪が短い、というかほぼ無かっただけに、散髪シーンは中々滑稽。

でも、どんでん返し不条理劇なら小説でやればよくね。本作品も不条理系はほぼセリフで導入されてたから、こんな微妙な空気になっちゃったんだよ。
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