えんさん

パディントン 2のえんさんのレビュー・感想・評価

パディントン 2(2017年製作の映画)
4.5
字幕版にて。

南米ペルーからやってきた熊のパディントン。今ではイギリス・ウィンザーズガーデンに住むブラウン一家の一員として幸せな毎日を送っていた。彼はどこへいっても”元気”と持ち前の前向きなキャラクターで、ご近所さんだけではなく、多くの人たちに愛されていた。そんな中、育ての親でもあり、今はペルーの老熊ホームで暮らしているルーシーおばさんの100歳の誕生日に、プレゼントを探していたパディントンはグルーバーさんの骨董品屋でユニークな絵本を見つける。早速、絵本代を稼ごうと窓ふきのアルバイトを始めていく。しかし、その絵本には驚くべき秘密が隠されており、その秘密を知るある人物が絵本を奪おうと画策してくるのだった。。英作家マイケル・ボンドのロングセラー児童文学を実写映画化した「パディントン」の続編。監督は、前作に続きポール・キングが務める。

1作目となる前作「パディントン」では、南米ペルーで叔父と叔母に育てられ、幸せに育っていた熊のパディントンがひょんなことからイギリスにやってきて、ブラウン一家と住むことになるまでを描いていました。本作では、ブラウン一家との生活シーンから始まるかと思いきや、いきなり南米ペルーでの回想シーンから始まるという異例な形でのオープニング。しかし、これがパディントンがルーシーおばさんを如何に愛しているかを象徴しているエピソードとなり、それが作品の後半以降、彼がルーシーおばさんのために絵本を必死に探していくという動機にうまく繋がっていると思います。もちろん、ブラウン一家との楽しい掛け合いも健在。映画全体を通して、パディントンのスマート過ぎる”ボケ”が炸裂していて、彼の見た目の愛くるしさとともに、笑い✕笑顔の総攻撃に合うほど楽しすぎる作品になっています。

それに本作の暗喩として感じられるのが、熊という描写を作品中でも少しもおかしいと思わせないところでしょうか。変なことを言っているかもしれないですが、作り物のファンタジーというのは分かっているとはいえ、普通にその辺に熊がいたらおかしいでしょう、、ということを全く感じさせないのです。ただ、これは日本にゴジラがいるというのとは少し違って(笑)、私たちの一般的に常識と思っていることを、社会の常識にしないことの警笛ではないかとも思うのです。違う宗教や文化で育ってきた人、障害を抱えている人、趣味・志向が違う人、、等々、多様化している現代社会を生きる人は1つの価値観に縛られ、それが正義だと思ってしまうと窮屈だし、とても生きにくい社会になってしまう。無論、法律などの社会のルールを守ることは大前提ですが、自分と違うからと他人を排除しては今の社会は成り立たない。それをパディントンは優しさや幸せ、そして笑いというのは、熊であっても万国共通で、私たちが相互理解し合える鍵だと教えてくれるのです。

本作を観るにあたって、短いメイキングをTVで観たのですが、パディントンがオールCGで役者陣は彼に見立てた棒に対して台詞を言ったりしているのは驚きでした。「ロジャー・ラビット」などの過去のアニメキャラクターと役者との掛け合いがある作品を観ている身としては、相当な技術の進化に改めて驚かされます。絵本の中にパディントンやルーシーおばさんが入り込むシーンなど、美術的に見ても素晴らしいところも盛り沢山。ただ、今回悪役となるヒュー・グラントがもう少し弾けたほうがよかったかな。。前作のニコール・キッドマンの体当たり演技を観てしまうと、ちょっと物足りない感じがしてしまいます(笑)。