KnightsofOdessa

DeewaarのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Deewaar(1975年製作の映画)
3.5
No.609[宿命に踊らされたある兄弟への挽歌] 70点

初期ボリウッドを代表する一本。友人から教わったざっくりボリウッド史によればグル・ダット→本作品(ヤシュ・チョープラー)→「シャー・ルク・カーンのDDLJ」(息子のアディティヤ)というのが流れらしい。主演は「スラムドッグ$ミリオネア」の第一問で登場したボリウッドの大スターであるアミターブ・バッチャン。ショーン・コネリーも驚く体毛の濃さ。作品自体は「マザー・インディア」のリメイク的な立ち位置にあるとのこと。いや、知らないもので知らないものを例えられても困るわ。

労組のトップだった父親アナンドは家族を狙うと脅されて交渉に失敗し、人々に見捨てられる。彼は家族に迷惑を掛けたとして彼らを捨て去り、残された母親はふたりの息子を抱えてボンベイまでやって来る。兄ヴィジャイは新しい"父親"として如何なる手段を以てしても家族を支えることを誓って港湾労働者として密輸に手を染めながら暗黒街をのし上がっていき、弟ラヴィはそんな兄の背中を見ながら警察官になる。兄弟は"幸せ"に対する考え方の違いから兄は"力と金"を弟は"愛と正義"を求めて袂を分かったのだ。前半のふたりの関係性が希薄な気もするが、後半になると加速度的に家族ドラマ化して面白くなり、特に兄弟が橋の下で会うシーンは「ヒート」のパチーノ/デニーロを思い出してしまった。展開としては手垢付きまくりな気もするが、カメラワークや演出や効果音などの"魅せ方"が昔の日本のテレビドラマを見ているようでニヤニヤしてしまった。結末が分かっていても何度も見てしまう昔のドラマに似た感覚である。

エキストラの量とか女優のやたら肉感的な感じはインド映画って感じがして良い。インド映画にしては珍しくカーストの影を感じないが、おそらくこれが恐らくチョープラーのエンタメに徹する姿勢であり、ヒットの要因だろう。また、歌に歌詞付けてくれなかったから何言ってるか分からなかったが意外にも三曲しか入っていなかったのは物語の関係から入れにくかったのだろうか。

原題"Deewaar"とは"壁"を意味している。いつしか兄弟の間に出来てしまった高い壁が崩れることはなかったが、母親は壁の上からふたりの息子たちを優しく見守っていた。えぇ話やぁ…。以上。
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